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朝鮮半島情勢をめぐる6者協議


研究員 松本はる香


北朝鮮の核開発問題をめぐる多国間協議が動いている。2003年4月、米中朝3ヶ国によって始められた北朝鮮の核開発問題をめぐる多国間協議は、6者協議(日本・米国・中国・北朝鮮、韓国、ロシア)へと拡大されることが正式に決まった。6者会議は8月27日より3日間の予定で北京において開催される。日本からは藪中三十二外務省アジア大洋州局長、米国からはケリー国務次官補(東アジア・太平洋担当)、中国からは王毅外務次官・アジア担当、北朝鮮からは金永日外務次官、韓国からは李秀赫外交通商次官補、ロシアからはロシュコフ外務次官が出席する。

当初、北朝鮮はあくまでも米朝2国間協議を望んでいた。また、拡大多国間協議の可能性については、日米中韓及び北朝鮮を加えた5カ国によってクアラルンプールで開催されるという方向性で調整が進められていた時期もあったようだ。だが、5カ国のほかに、北朝鮮へ「体制保証」を与えることについてより積極的な姿勢を示すロシアを加えることを北朝鮮が望んだため、最終的には6カ国協議が開催されることになった。また、ロシアにとっても多国間協議への参加を通じて、朝鮮半島に対する影響力を確保することは外交上重要であるという点において多国間協議への参加の利害は一致した。こうして北東アジアの安全保障をめぐる多国間協議のためのメインプレーヤーは揃った。

6者協議開催に先駆けて、8月13・14両日、ワシントンDCにおいて日米韓による局長級協議が開かれた。日本からは藪中外務省アジア大洋州局長、米国からはケリー国務次官補、韓国からは李秀赫外交通商次官補が出席した。日米韓協議においては、北朝鮮の譲歩の姿勢に応じてむやみに経済的支援を行うことなく、核開発計画の完全な放棄を求める方針が確認された。また、6者協議で日米韓3カ国が具体的な提案を行う場合、3国共同提案とするか、各国の個別提案とするか、不可侵の確約を行うかどうか、その場合に「先制攻撃」或いは米国による核のオプションをいかに扱うかについて等の点についての議論がなされたと報じられている。

米韓両国は、北朝鮮に対して硬軟両側面からのアプローチを取っている。アメリカのパウエル米国務長官は、北朝鮮による核放棄の見返りとして、米国議会決議によって「体制保証」を行うといった方策を示唆している。だが、現在のところ、「体制保証」の具体的内容について明らかではないし、6者の間で一定のコンセンサスが存在するわけではないのも事実である。また、韓国からは、「同時並行方式」として、核放棄プロセスと経済、エネルギー援助を「ロードマップ(日程表)」によって進めようという提案もなされている。その一方で、北朝鮮に対して事前の通告がなされたものの、米韓連合軍司令部は8月18日より29日までの予定で、米韓両軍による軍事訓練を開始することによって、北朝鮮への牽制を図っている。

日本は、北朝鮮を含む多国間協議に臨むにあたって、核開発阻止、ミサイル開発凍結、拉致問題解決などの課題を抱えている。拉致問題に関しては、福田官房長官は、8月11日、北京において、「拉致問題について具体的な話し合いをするとなると、2カ国間会談というような形を取らざるを得ない」との考えを示している。さらに、8月15日、川口外相は拉致問題に関して、「問題の包括的解決という観点から6者協議で提起する。具体的議論は日朝間の問題として2国間協議の場で行う」と言及した。日本政府は、6カ国協議と平行して、拉致問題などをめぐって日朝2国間で粘り強い交渉を続けてゆく見込みである。

以上述べてきたように、間もなくトラック1(政府間)の6者協議が開催される。さらにそれに続く、9月1日・2日の両日、トラック2の「6者協議」である「北東アジア協力対話」(NEACD:Northeast Asia Cooperation Dialogue)会議が中国山東省青島で開催される。今年で14回目を迎えるNEACDは、北朝鮮からの参加者を含む、北東アジア6カ国の高官や専門家が個人の資格で参加するトラック2形式の多国間安全保障対話の枠組みである。日本からは、個人資格で、外交・安全保障の専門家が、外務省、防衛庁、日本国際問題研究所から派遣される。必ずしも公式見解に縛られない「6者協議」の開催によって、北朝鮮の核開発開発を阻止するためのトラック2によるアプローチにも注目が集まっている。

(2003-08-22)

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