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拡散に対する安全保障構想(PSI)


宮本悟(研究員)


ブッシュ米大統領は2007年2月14日の記者会見で、13日に採択された6者会合(6カ国協議)の合意を高く評価した。と同時に、この合意は、核兵器や生物兵器といった大量破壊兵器(WMD)等の北朝鮮との取引を禁じた国連安保理決議1718(2006年10月14日)に支持されるとも述べ、北朝鮮によるWMD移転を続けて監視することを示唆した。北朝鮮の核開発のみならず、WMDの移転・拡散は国際社会における喫緊の問題である。それを阻止する措置を各国が共同して検討し、実践していくための取り組みが、拡散に対する安全保障構想(PSI:Proliferation Security Initiative)である。

PSIの発足以前には、各国がその領域内でのみ拡散阻止を講じてきた。しかし、PSIの下では、自国の領域外でも他国と連携してWMDなどの拡散を阻止することになる。こうした各国共同の拡散阻止の指針として、2003年9月4日に第3回PSI総会(パリ開催)で採択された「阻止原則宣言」がある。

PSIは、2003年5月31日にブッシュ米大統領がポーランドのクラクフで演説し、航空機や船舶に対する検査によってWMDやミサイル技術の拡散を防止する新しい取り組みを緊密関係にある同盟国に呼びかけたことに始まる。この構想は、米国が2002年12月11日に発表し、拡散対抗や拡散防止、大量破壊兵器による被害管理について提起した「大量破壊兵器と闘う国家戦略(National Strategy to Combat Weapons of Mass Destruction)」で既に端を見出すことができる。こうした米国の大量破壊兵器の拡散に対する取り組みは、2001年9月11日の対米同時多発テロ事件を受けて、対テロ戦争の推進を鮮明にした2002年9月17日の「米国の国家安全保障戦略(The National Security Strategy of the United States of America)」の中核を為すものである。

演説の翌月である2003年6月12日には、スペインのマドリードで第1回PSI総会が開催され、日、米、英、伊、蘭、豪、仏、独、スペイン、ポーランド、ポルトガルの11カ国が参加した。この11カ国は、PSIの発展に中心的な役割を果たすコア・グループとなる。後に、シンガポール、ノルウェー、カナダ、ロシアが加わってコア・グループは15カ国になった。2005年にコア・グループは廃止されたが、現在では80カ国以上がPSIを支持しており、PSIはWMD等の拡散阻止のための活動として国際社会に広く受け入れられたといえよう。

PSIの主な活動は、各種会合の開催、阻止訓練の実施、参加国・協力国の拡大のための普及活動(アウトリーチ活動)である。日本は、総会をはじめとする全体会合やオペレーション専門家会合、阻止訓練にほぼ参加してきただけではなく、2004年10月には阻止訓練を主催するほど積極的な活動を見せてきた。また、アウトリーチ活動として、アジア不拡散協議(Asian Senior-level Talks on Non-Proliferation: ASTOP)やアジア輸出管理セミナー(Asian Export Control Seminar)を開催している。

PSIは、北朝鮮による核開発を阻止するための各国の協力でも一定の成果を挙げてきた。6カ国協議のメンバーでPSIに参加しているのは日・米・露だけであるが、中国は2003年夏に米政府からの情報によって北朝鮮の核関連物資の輸入を中朝国境で阻止したことがあり、PSIへの協力を見せている。また、米国の同盟国でありながらPSIに参加していない韓国も、PSIに協力する意向は示している。ただ、中国や韓国がPSIに協力的な姿勢を示していても、アジア・太平洋地域におけるPSIの主導国が日本や米国、オーストラリアであることに変わりなく、PSIにおける日本の役割は非常に大きいといえよう。

(2007-03-05)

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