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アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)


坊野成寛(研究員)


2007年2月2日、マラッカ海峡(タイ領内)で初の日本、タイ、マレーシア3カ国の海上保安組織による海賊対策合同訓練が行われた。1999年、同海峡において発生した「アロンドラ・レインボー号」襲撃事件以来、日本は同海峡沿岸国各国と日本の二国間による合同訓練を実施してきた。
また、合同訓練の他に、インドネシア、フィリピン、マレーシアへは各国の海上保安組織の制度・整備支援、人材育成を目的とした専門家の派遣、タイからは海上保安大学校への留学生受け入れなど、東南アジアにおける支援を行っている。

このような取り組みの他にも日本は、マラッカ海峡の海賊対策に取り組んでいる。その一つに「アジア海賊対策地域協力協定(Regional Cooperation Agreement on Combating Piracy and Armed Robbery against Ships in Asia: ReCAAP)」(*1)がある。同協定は、小泉前首相が、2001年11月にアジアの海賊問題に有効に対処するための地域協力の法的枠組みの作成を提案したことに始まり、2004年11月東京で日本、ASEAN10カ国、中国、韓国、インド、スリランカ、バングラディッシュの16カ国により採択された。日本は、2005年4月28日にシンガポールで署名式を行なった。
同協定は22条の条文から成っており、協定の主な目的は以下の3点である 。
① 海賊に関する情報共有センターの設立。
② 情報共有センターを通じた海賊に対する情報共有体制・協力体制の構築。
③ 同センターを共有しない締約同士の二国間協力の促進

本協定は、締結国が10カ国に達した時点で、条約の寄託国であるシンガポールに通告してから90日後に発効するとされていた。採択から約1年半が経過した昨年6月に10カ国に達し、9月4日に発効した。同年11月28日シンガポールにて第1回総会が開かれ、29日にシンガポールに情報共有センターが設立され、初代事務局長に伊藤嘉章(国連代表部公使)が選出された。

現在の締約国は、日本、シンガポール、ラオス、タイ、フィリピン、ミャンマー、韓国、カンボジア、ベトナム、インド、スリランカ、中国、ブルネイ、バングラディッシュの14カ国である。
マレーシアとインドネシアは、マラッカ・シンガポール海峡(マ・シ海峡)への域外国の関与に関しては消極的態度を取り続けており、締約国になるには至っていない。
本協定の第一の目的である情報共有センターの設立は昨年達成できたので、今後は協力体制(監視、事件が起こったときの共同行動)の構築が達成されるかどうか注目される。

本協定は、東アジア共同体の議論と絡めて考えても、安全保障問題における機能的な面での積み上げとして、また日本のイニシアティブが発揮されたものとしても期待を抱かせるものである。東アジアにおける多国間協力が経済的側面から安全保障の対象まで含む協力へと進化できるかどうかのテスト・ケースとなると考えられる。
しかし、締約国を見ても分かるとおり、今回合同訓練は行ったものの、マレーシアは同協定の締約国にいたっていない。マ・シ海峡をはじめ、海賊多発地域である海域国の2国(マレーシアとインドネシア)がいまだ締約国になっていない。今回の合同訓練でも、マレーシア海上法令執行庁(*2)は参加しておらず、同協定への締約とともに、マレーシアとインドネシアへ、海賊問題に対する多国間枠組みへのより積極的な参加を働きかける必要があるだろう。


*1 協定の全文は、日本外務省のホームページを参照のこと。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaiyo/pdfs/kyotei_s.pdf

*2 マレーシア海上法令執行庁(Malaysia Maritime Enforcement Agency: MMEA):海上警察、海事局、漁業局、税関など10以上の関係機関により行なわれていた海洋における法令業務を一元化し、効果的に実施するために設立されたもの。2005年2月に発足、同年11月30日に運用が開始されている。

(2007-03-12)

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