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軍事情報一般的保全協定(GSOMIA)


藤重博美(研究員)


2007年5月、日米安全保障協議委員会(2プラス2)において、「軍事情報に関する一般的保全協定(GSOMIA: General Security of Military Information Agreement)」を締結する方針が、実質的に合意された。2005年10月の米軍再編中間報告で、共有の秘密情報を保全するための追加的措置の策定が日米両政府間で合意されていたことを受けたものだ。両国政府は年内の協定締結を目指している。

GSOMIAは、米国が同盟国に秘密軍事情報を提供する場合、情報の被提供国が米国と同程度の秘密保全措置を講じることを定めるものである。第三国への情報漏洩防止を主眼とした措置で、現在、米国はNATO諸国、イスラエル、韓国、オーストラリア、インドなど、同盟国・友好国60カ国以上とGSOMIAを締結している。

GSOMIAが締結されれば、装備関連から技術研究・開発、作戦や訓練に関わる情報まで、幅広い軍事機密情報が保全の対象となる。また、口頭による情報伝達や録音音声、画像、非公式なメモや手紙の類に至るまで、様々な形式の情報が網羅的にカバーされる。さらに、情報保全の義務を負うのは日本政府だけではなく、機密情報に触れる機会のある民間企業も対象に含まれることになる。

現在、日本における防衛上の情報は、自衛隊法によって定められた「省秘」、「防衛秘密」と日米相互防衛援助協定(MDA)に基づく「特別防衛秘密(特防秘)」の三種類に分類されている。前者二つは、防衛省・自衛隊が保有する情報に対するものであり、特防秘は米国から供与された装備品(戦闘機やミサイル、イージスシステムなど)に関わる情報を対象としている。

従来、日本政府は、GSOMIAの締結に慎重な姿勢を取っており(註)、米国から提供された機密情報の保全についてはMDAに基づいて対処する場合が多かった。ところが、ミサイル防衛システムの導入などにより装備品関連以外の機密情報が共有される場面が増え、MDAでは対処しきれなくなってきた。また、MDAの範囲外の情報の保全については、これまでは個別案件ごとに協議し、了解覚書を取り交わしていたが、包括的な内容を持つGOSOMIAの締結により、情報保全に関わる手続きの簡素化も期待できる。

GSOMIAの締結後は、協定に定められた情報保全を国内的に厳格に実施していくことが、なによりも重要となるだろう。しかし、現行制度では守秘義務を負わない国会議員を対象とした国内法整備も検討されたが、こうした法整備は政治的に扱いの難しい問題であるため、結局は見送られることになった。また、自衛隊では、ファイル交換ソフトによるウェブ上への情報漏洩や最高機密に属するイージス艦関連情報が海自下士官に漏れる事件などが後を絶たず、情報管理の甘さが問題になっている。さらに民間企業関係者への守秘義務の徹底など、これから取り組むべき課題は多い。

【註】情報漏洩防止策は、憲法で定められた言論の自由との兼ね合いで、政治的に極めてデリケートな性質の問題である。冷戦中だった1980年代、東芝機械ココム(対共産圏輸出規制委員会)規制違反事件などを契機に、政府がスパイ防止法を成立させようと試みたことがあった。しかし、野党やマスコミ、法曹界などから反発が大きく、結局、法制化は断念されることになった。
(2007-06-18)

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