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一党独裁制と議会


宮本 悟(研究員)


一党独裁制は、ジョヴァンニ・サルトーリの政党制分類によれば、ヘゲモニー政党制に分類される。支配政党による国家支配が確立しており、政党間の競合が許されていない政党制である。小政党が存在する場合もあるが、支配政党との競合は許されていない。一党独裁制を採っているのは、社会主義国家がよく知られているが、エリトリアやミャンマー、民主化以前の台湾やスペインなど、非社会主義国家でも存在する。政党間の競合が許されていない点で、自民党の長期政権が続いた日本などの一党優位政党制とは異なる政党制である。

北東アジアでは、中国と北朝鮮が一党独裁制である。北東アジア以外では、キューバやエリトリア、ベトナム、ラオス、ミャンマー、シリアなどが一党独裁制として知られている。支配政党の地位は、憲法でも保障されている場合が多い。憲法での規定はないが、著しく与党に対する野党の競争が制限されているシンガポールやトーゴも一党独裁制として分類されることがある。これらの一党独裁制国家では、政党間の競合がないため、民主主義国家のように複数の政党が法案について議会で討議する意味がないように思われる。にもかかわらず、多くの一党独裁制国家では議会が存在する。

キューバでは人民権力全国会議、エリトリアでは国民議会、ベトナムでは国会、ラオスでは人民議会、ミャンマーでは国民議会(実質的に停止中)、シリアでは人民議会と呼ばれる議会が存在する。議員は選挙によって選ばれる場合が多いが、エリトリアのように選挙を実施していないところもある。ただし、選挙が実施されても、一党独裁制を維持するために、公平かつ平等なものとはいい難い。

同じように、中国や北朝鮮にも議会がある。中国では全国人民代表大会が議会である。北朝鮮では最高人民会議が議会である。全国人民代表大会は最高国家権力機関、最高人民会議は国家の最高主権機関と憲法で定められている。従って、共に、国家機関における最高権力を持つ立法機関である。その点では、日本の国会とほとんど大差ない。しかし、全国人民代表大会や最高人民会議に最高権力があるとは考えにくいであろう。

最高権力については、一党独裁制では議会よりも政党に注目する必要がある。中国では中国共産党が支配政党であり、北朝鮮では朝鮮労働党が支配政党である。ただし、中国や北朝鮮には、支配政党以外の合法政党も存在する。中国には、中国国民党革命委員会や中国致公党、中国農工民主党、中国民主同盟、中国民主促進会、中国民主建国会、九三学社、台湾民主自治同盟が存在する。北朝鮮には、朝鮮社会民主党や天道教青友党が存在する。しかし、これらの小政党は支配政党と競合することは許されていない。しかも議会の議員は、支配政党が多くを占めている。そのため、支配政党で決定されたことがそのまま議会で承認されることになる。国家の最高権力機関である議会は、支配政党によって支配されているといえよう。ただし、国民のすべてが支配政党の党員ではないので、国家機関である議会を活用することで、非党員も含めた国民に対する支配政党の国家統治が円滑となる。一党独裁制では、議会は支配政党が国家とその構成員である国民を統治するための道具に過ぎないのである。

従って、一党独裁体制では、国家の最高権力よりも、党の最高権力がより重要になってくる。そのため、党の最高権力者が、実質的な国家の最高権力者でもある。中国では、中国共産党総書記である胡錦濤が最高権力者である。北朝鮮では、朝鮮労働党総書記である金正日が最高権力者である。このことは、しばしば最高権力者と国家元首が異なる場合を生み出す。中国では、胡錦濤が党総書記と国家主席を兼ねているので、最高権力者と国家元首が同じである。しかし、北朝鮮では、党総書記である金正日が国家元首である最高人民会議常任委員会委員長を兼ねていない。最高人民会議常任委員会委員長は金永南である。金正日は国家元首ではないが、いうまでもなく北朝鮮の実質的な最高権力者である。

一党独裁制は、権威と権力が一極に集中しやすく、民主主義制(ポリアーキー)からはほど遠い。しかし、サミュエル・ハンチントンが論じたように、一党独裁制は権威と権力が集中しているため、政治秩序を形成しやすい。それはイラク戦争での経験からも理解できる。バース党支配のイラクでは政治的自由は限られていたが、秩序は守られていた。反対に、戦争後のイラクでは政治的自由はあったが、秩序は崩壊した。民主主義制は秩序があるところでは平和も実現できるが、無秩序なところではむしろ一党独裁制が平和をもたらすことも有り得るのである。

【参考文献】
・ジョヴァンニ・サルトーリ著、岡沢憲芙、川野秀之訳『現代政党学―政党システム論の分析枠組み』(早稲田大学出版部、2000年)

・Samuel P. Huntington, Political Order in Changing Societies, (New Haven and London: Yale University Press, 1968)

(2009-03-10)

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