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ヤロスラヴリ政策フォーラム


横川和穂(研究員)


ヤロスラヴリ政策フォーラムとは、ロシアがメドベージェフ大統領のイニシアチブの下、2009年より立ち上げた国際会議である。日本では開催地の地名をとってヤロスラヴリ政策フォーラムという呼び名が定着しつつあるが、ロシアでは世界政策フォーラム(Mirovoi politicheskii forum/Grobal policy forum)と呼ばれている。世界経済フォーラム(その年次総会がダボス会議として知られている)とよく似た名称に示されるように、まさにロシアが政治版ダボス会議の創設を目指して立ち上げたフォーラムである。

フォーラムの目的は、現代における国家の役割や民主主義のあり方などについて、国際的な議論を喚起することにある。2009年9月に行われた第1回会合において、メドベージェフ大統領は以下のように述べている。すなわち、20世紀末からのグローバリゼーション下における国民国家の役割の後退という流れが今回の世界金融危機によって覆され、今、国家の役割の重要性が問い直されている。そして、世界金融危機をはじめ、気候変動や伝染病、テロ、不法移民といった諸問題に見られるように、現代においては一国の政策の失敗がグローバルな影響をもたらしうるため、各国はお互いを良く知る必要がある。仮に国際的な問題に発展しうるような政策的な誤りが存在するなら、お互いの対外政策、ひいては内政についても口をはさむ権利があるのだと。こうした問題意識から、メドベージェフはヤロスラヴリ政策フォーラムが現代の国家のあるべき姿や民主主義の多様な形態をめぐる国際的な議論の場となることに大きな期待を寄せている (1)

2009年9月14日に行われた第1回会合には、メドベージェフ大統領のほか、スペインのサパテロ首相、フランスのフィヨン首相をはじめ、政治家や学者、ビジネス関係者、官僚など18か国から550名以上を超える参加があったとされる。同会合では、メイン・テーマ「現代の国家とグローバル・セキュリティー」の下に第1分科会「グローバルな安定の要素としての現代国家の社会的責任」、第2分科会「現代の国家:民主主義の経験の多様性」、第3分科会「国家間協力とグローバルな機構の効率性」、第4分科会「テロリズム、分離主義、外国人排斥に対抗する現代国家」という4つの分科会が設けられ、国家建設の新たなスタンダード、民主主義、そして国民の自由や生活、およびグローバルな安全を守るために現代の国家はいかにあるべきかといった問題について議論が交わされた。

今年9月9-10日に予定されている第2回会合では、「現代の国家:民主主義のスタンダードと効率性の基準」というテーマに沿って、第1分科会「技術的近代化の手段としての国家」、第2分科会「民主主義のスタンダードと民主主義の経験の多様性」、第3分科会「新たな挑戦と国際法のコンセプト」、第4分科会「グローバルな安全保障の地域的システム」、という4つの分科会が予定されており、各国から著名な学者や政治家が参加するようである (2)。ロシアは今回のフォーラムのための準備会合を4か国で開催しており、第1分科会の準備会合が2010年6月29日に東京で、第2分科会の準備会合が6月25日にドイツのベルリンで、第3分科会の準備会合が5月7日に米国のハーバード大学で、第4分科会の準備会合が5月29日にラトヴィアで開かれている。

日本国際問題研究所とロシア・社会計画研究所との共催により東京で開催された準備会合「産業技術の近代化における国家の役割」では、日露双方からITやバイオ、省エネ技術といった先端技術部門の研究者や経済学者、企業代表などが集まり、イノベーションの推進やそのための産業政策のあり方、国民生活への影響、各部門における具体的なイノベーションへの取り組みなどをめぐって活発な意見交換が行われた (3)。グローバル化時代の経済成長のあり方など、9月のヤロスラヴリ政策フォーラム本会合にもつながる様々な論点が得られたが、同時に、ロシア側には自国の近代化政策についてアピールし、日本にイノベーション部門を中心とした経済協力を要請する狙いがあったものと考えられる。この準備会合においてロシア側代表者の1人が述べたように、ヤロスラヴリ政策フォーラムの使命は金融危機後の世界における新たな「ゲームのルール」の模索にあるが、各国がロシアの呼びかけにどう反応し、いかなる議論が行われるのか、注目されるところである。

なお、フォーラムの主催はロシアの社会計画研究所、現代発展研究所、ヤロスラヴリ国立大学の3つの機関である。開催地ヤロスラヴリ市はヤロスラヴリ州の州都で、人口は60万人強、モスクワの北東約250km に位置し、今年建都1000年を迎えるロシアの古都である。2005年には市街の歴史地区がユネスコの世界遺産に登録されるなど、ロシアの文化的な中心地のひとつとなっている。ヤロスラヴリにとっては昨年の第1回会合に引き続き、今年の第2回会合も建都1000年の記念祭を盛り上げる重要な行事の1つと位置づけられており、以降ロシアは定期的な開催を目指すものと見られる。


(1) 第1回ヤロスラヴリ政策フォーラム報告書Yaroslavl 2009: The Modern State and Global Securityより。

(2) プログラム等はヤロスラヴリ政策フォーラムのホームページhttp://en.gpf-yaroslavl.ru/で見ることができる。

(3) 準備会合の詳細についてはこちらの報告書を参照されたい。

(2010-08-30)

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