2003年は、2002年の小泉総理の提案に基づき、日・ASEAN関係における数々の節目の年にあたることから、日・ASEAN首脳はこの年を「日・ASEAN交流年」と定めることとした。
本事業は、交流年記念活動の一環として、1月21日(火)、22日(水)の両日、沖縄(沖縄コンベンションセンター)にて日本ASEAN国際ワークショップを、外務省と日本国際問題研究所との共催、及び沖縄平和協力センターとの協力により開催、また続く22日、公開シンポジウムを沖縄県、宜野湾市、琉球新報社、沖縄タイムスの後援を受けて開催した。

このワークショップでは、「新たな日・ASEANパートナーシップ:ガバナンス、人間の安全保障およびコミュニティ・ビルディング」と題して、小和田恒日本国際問題研究所理事長、エディ・プラセチョーノ・インドネシア戦略国際問題研究所国際関係部長、ノルディン・ソピー・マレイシア戦略国際問題研究所(ISIS)理事長、および山影進東京大学教授が各テーマにおけるセッションの議長を務め、アジア経済危機以降のガバナンス強化に向けた取組み、ASEANデバイド、国境を越える問題、さらに日・ASEAN間における市民社会の協力の可能性について、日・ASEAN双方の有識者が議論を行った。
また、本ワークショップは、1998年12月の日・ASEAN首脳会議で(ベトナム・ハノイ)で小渕総理(当時)が提唱し発足した「ビジョン2020:日・ASEAN協議会(賢人会議)」の最終報告書のフォローアップ・プロジェクトとしても位置づけられており、報告書で確認された日・ASEAN間の新しいパートナーシップを、市民社会のレベルにまで拡大していくべきだとの点が確認された。

また、公開シンポジウムでは、「アジア太平洋における沖縄」と題して、日・ASEAN協力の可能性について沖縄市民の理解を増進するとともに、東アジアにおける沖縄の位置づけ・交流拠点としての可能性について、沖縄を含む日・ASEAN間において意見交換を行った。
冒頭、小和田日本国際問題研究所理事長より、日本・ASEAN関係の説明に続き、ASEANと沖縄の地理的、文化的共通点を説明した。これを受け、ASEAN側出席者からは、沖縄の可能性をめぐり、市民レベルでの連帯協力、英語教育の重要性、海外に沖縄の拠点を設け沖縄の知名度向上を目指すべきとの意見、沖縄を学術交流拠点として活性化させること等活発な意見が述べられた。これに対し、一般参加者は、環境対策についての沖縄の経験と知識をもって、ASEAN各国と協力する可能性を質問。これに対しシンガポール国際問題研究所エリック・テオ評議員は、緑の都市を目指す自国を例に挙げながらその可能性について評価。マレイシア戦略国際問題研究所ノルディン・ソピー会長が、東南アジア各国を襲ったアジア通貨危機を例に挙げ、宮沢プランを「lifesaver」と高く評価すると共に、日本の価値観を忘れることのないよう会場の参加者に訴えた。最後に、小和田国問研理事長より、何事も当事者意識をもって立ち向かうことが重要であること及び、他方で当事者意識を支えるものは、パートナーシップであり、この二つの要素を車の両輪として進めることが重要であるとして、本シンポジウムを締めくくった。

21、22両日を通じて、本ワークショップ、シンポジウムについて、NHK沖縄放送局及び民放2局がそれぞれニュースの枠で報じたのをはじめ、沖縄タイムス、琉球新報といった県内主要紙も一面トップで掲載し、22日に行われた公開シンポジウムには、約150人の市民が参加するなど、その関心の高さを示した。



公開シンポジウム パネリスト:
小和田 恆日本国際問題研究所理事長
大城 常夫 琉球大学教授
山影 進 東京大学教授
クスマ・サニッウォン タイ安全保障国際問題研究所(ISIS)会長
ノルディン・ソピー マレーシア戦略国際問題研究所(ISIS)会長
エリック・テオ シンガポール国際問題研究所(SIIA)評議員