ホーム > 研究活動

研究活動

戻るトップページ

連載企画:パレスチナ政治を読み解く鍵(2)
―基本法から読む政治制度


横田貴之(研究員)



現在、パレスチナ自治区では、憲法に相当する基本法が施行されています。この基本法において、立法、行政、司法など暫定自治の運営に関する諸事項が規定されています。



1993年のオスロ合意直後、PLO内で基本法の草案作成が開始され、同年末には最初の草案が起草されたとされます。1994年の暫定自治開始後も、基本法草案に関する議論が継続して行われましたが、アラファート大統領(当時)は自身の政治的影響力・権力基盤を基本法が制限する恐れがあったため、その承認を控えました。その後、パレスチナ内部や米国など関係諸国から基本法制定を求める声が高まったため、2002年5月、アラファート大統領は基本法を承認しました。また、翌年3月には基本法の改正が行われ、新たに首相職が設けられました。




現行基本法では、立法、行政、司法について次のように規定があります。




立法権は一院制の立法評議会(PLC)が行使し、立法評議会は行政権の監督、内閣の信任、予算案や法案の審議、基本法の改正を行います。立法評議会議員は、選挙法の定める直接普通選挙により選出され、その定数は132名です(2005年の選挙法改正以前は88名)。当初、議員の任期は暫定自治終了まででしたが、2005年8月の基本法改正により4年に改正されました。また、投票権は18歳以上のガザ、西岸、エルサレムに居住する全パレスチナ人が有し、事前に選挙登録を行った者が投票することができます。また、現行の選挙法では、28歳以上のパレスチナ人が立候補権を有しています。




行政権は大統領、そして首相および内閣が行使します。大統領は選挙法の定める直接普通選挙によって選出され、法律の公布、立法評議会通過法案の差し戻し、恩赦、首相の任免権、非常事態令の発令、在外代表(大使)任命などの職権を有します。現在の大統領はマフムード・アッバースです。当初、大統領の任期は暫定自治終了までとされていましたが、2005年8月の基本法改正により4年に改正されました。18歳以上のガザ、西岸、エルサレムに居住する全パレスチナ人が投票権を有し、事前の選挙登録によって投票が可能となります。現行選挙法では、パレスチナに在住し、かつ両親がパレスチナ人である40歳以上のパレスチナ人が立候補権を有すると定めています。




一方、首相が率いる内閣は大統領による首班指名に基づいて組閣され、立法権が定めた諸法を施行します。首相は大統領に対して責任を負い、閣僚は首相に対して責任を負います。さらに、首相と閣僚は立法評議会に対しても責任を負います。なお、首相職は2003年の基本法改正によって、アラファート大統領(当時)の政治権力を制限することを主な目的に設けられた役職であり、基本法においても大統領と首相の職務分担・調整は必ずしも明確ではありません。2006年立法評議会選挙で勝利したハマースイスマーイール・ハニーヤを首相とする内閣を組閣しましたが、その後のハマース・ファタハ間の争いの一因として、大統領と首相の職務分担・調整の不明瞭さを指摘する声もあります。



司法権は基本法によってその独立が保障され、裁判官の独立も同様に保障されています。普通裁判所の他に、司法および検察を監督する法を扱う最高司法評議会、シャリーア裁判所、軍事裁判所、行政裁判所、基本法を扱う最高憲法裁判所などが存在します。




また、基本法では市民の権利として、身体、信仰・信条、宗教実践、言論、表現の自由、そして法の定める範囲内での結社の自由などが定められています




本連載企画について-はじめに


(2007-08-10)

▲ページの先頭へ
戻るトップページ