日ASEAN 安全保障シンポジウム 2003
10月9日、10日の両日、(財)日本国際問題研究所とシンガポール防衛戦略研究所(IDSS)の共催、外務省の後援により、「日本ASEAN交流年2003記念事業:日ASEAN安全保障シンポジウム2003」が東京都内に於いて開催された。同シンポジウムは、佐藤行雄・当研究所理事長及びバリー・デスカー・シンガポール防衛戦略研究所所長による共同議長のもとで行われた、日本とASEAN10カ国の政府関係者及び有識者が個人の資格で参加するトラック2の非公開会合であり、大量破壊兵器、テロ、国際犯罪、海洋の安全等、アジア太平洋地域における安全保障上の問題解決のための具体的な協力、将来におけるこの地域の安全保障協力の枠組み等に関しての議論がなされた。
2003年は福田元総理が設立に貢献したASEAN文化基金の設立25周年に当たる。2002年11月の日ASEAN首脳会議において、2003年を「日本ASEAN交流年2003」と位置付けることが正式に合意された。これを受けて平成15年度においては、「共に歩み共に進む」ASEANとの率直なパートナーシップをさらに強化すべく、政治、経済、社会、教育、文化・芸術といった幅広い分野での様々な日ASEAN間の交流事業が行われてきた。しかしながら、安全保障分野における日ASEAN間の交流事業は実施されてきておらず、この意味においても、「日ASEAN安全保障シンポジウム2003」の開催は、日本とASEANの安全保障対話・協力関係をより強化していくために重要な意義を有する会議であった。
同シンポジウムの目的は、以下の3点に集約される。第1は、日ASEAN間の安全保障協力を強化すべく、トラック2による自由闊達な議論を展開すること、第2は、日ASEAN各国の政府関係者と研究者との結びつきを強化し、安全保障を専門とする有識者間のネットワークの構築を図ること、及び、第3は、中長期的に、アジア太平洋地域における既存の安全保障対話の枠組みを超えた、政府関係者による討議の新たな枠組みを設置することを目指すことにある。
冒頭、9.11テロ事件以降の日本及びASEANの安全保障環境の変化に関し、共同議長である佐藤行雄・当研究所理事長及びバリー・デスカー・シンガポール防衛戦略研究所所長より、日ASEAN双方の観点からの問題提起があった。日本側からは、現在テロと大量破壊兵器の拡散という2つの課題に直面しており、安全保障の議論の中心を信頼醸成のための対話から、具体的な議論、実際の協力に移行すべき時期に来ているとの指摘があった。また、ASEAN側からは、現在、世界は大変動期にあるとして、イラクが米国の関心を占め、アジアにおける米国の関心が低下する可能性、東南アジアにおける中国の役割の増大から将来中国が日本に代わって台頭する可能性、また、中国、日本、韓国がASEANとの間に積極的にFTAを進めていることから、アジア太平洋地域における新しい経済地域化等が見られる。経済地域化と地政学的問題や安全保障問題は複雑に絡み合っていることから、この点についてより議論する必要があるという指摘があった。さらに、同シンポジウム参加者共通の認識として、日本とASEANは、いま、伝統的安全保障上の脅威に加えて、非伝統的な安全保障上の脅威に直面していることが強調された。特に、非伝統的安全保障上の脅威であるテロリズムに対しては、日ASEANが共同で対処すべき深刻かつ重要な問題であるという認識は、シンポジウム参加者の共通認識であった。今後、日本とASEANがテロリズムに対抗するために、協力できる分野として、�@諜報活動におけるキャパシティビルディング強化、�A新たに設立された東南アジア地域テロ対策センターに対する支援、�B米国が国際テロの根本原因の一つである中東和平に対してより積極的に関与するよう促してゆくこと、�C地域のグッドガバナンスや生活水準の向上に対する支援を行うこと、等の具体的方策が参加者の間で提案された。
シンポジウムの議事日程は以下の通りである。
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