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JIIA 講演・懇談会
ヴァルトナー・オーストリア外相との懇談会

片岡貞治

10月19日、外務省賓客として訪日中のヴァルトナー・オーストリア外相をお招きして「EU拡大におけるオーストリアの役割」と題する懇談会が当研究所大会議室で行われた。なお、司会は小和田恆・当研究所理事長が務めた。

1. 要  旨

欧州を戦禍に陥れた第二次世界大戦から半世紀以上が経過した今日、チャーチルが第二次世界大戦後直後に述べていたような「欧州合衆国」は未だに日の目を見ていないが、欧州はすでにEUという強力な超国家組織を有している。今や、EUは、共通の通貨を有し、共通外交安全保障政策(CFSP)、共通安保防衛政策(ESDP)を実践し、国際社会において政治経済上の重要なアクターとなっている。欧州統合プロセスの歴史は、まさにサクセスストーリーである。なぜなら、EUは、欧州内の和解を促進し、加盟国の平和と安定を保障してきたからである。現在の拡大プロセスが終了した暁には、EUは5億人の人口と30カ国以上の加盟国から構成される強大な組織となり、世界におけるEUのグローバルな役割をさらに強化することになろう。

今後、EUと日本は現在以上の経済パートナーとなっていくであろうし、なっていかなければならない。日本とEUは、安全保障の面でも協力していく必要があろう。

9・11テロは世界を震撼させたばかりでなく、世界そのものを変えてしまった。オーストリアはEUの他の加盟国や日本と同様に、テロと戦う米国に対して連帯感を有している。このテロは米国に対して行われたのではなく、我々すべてに対して、文明社会全体に対して行われたものであると認識している。自分はすぐに中東を訪問し、関係諸国の首脳や外相に、テロに対する戦いの重要性を伝えた。オーストリアは伝統的に中東諸国から信頼されている国である。

また、オーストリアは2000年にOSCE議長国を務め、12月には日本とOSCEとの共催で「中央アジアに関する日本・OSCE会議」も行っており、アフガニスタンを含む中央アジアの諸問題に対して積極的に取り組んでいる。

現在のオーストリア外交の最重要課題は、EUの拡大プロセスである。オーストリアがEU議長を務めた98年に、中東欧諸国のEU加盟交渉がスタートしていることや、16000ものオーストリア企業が中東欧の候補国に投資を行っていること等から見られるように、オーストリアは歴史的に、中東欧のEU加盟候補国と友好的でかつ経済的に重要な関係を維持しており、こうした中東欧諸国のEU加盟を積極的に支援しているのである。

2. 印  象
人口800万人に過ぎない欧州中堅国であるオーストリアが中東欧のみならず、EUのリーダーであるかのような印象を出席者に与え得たきわめて密度の濃いかつ巧みに演出された懇談会であった。オーストリアの有名な永世中立政策に関しては、国内的に大きな議論が継続中であるが、ESDPの進展、国際貢献の声の高まり等によって国際社会の要請に適合させるべく若干の変更が余儀なくされることを認めたことも印象的であった。
(グローバルイシューズ(欧州・アフリカ)研究員)

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