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「国際問題」電子版 (ISSN:1881-0500) -最新号-

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2017年3月 No.659
電子版

 南シナ海問題についてフィリピンが中国を提訴していた、比中仲裁の本案判裁定が2016年7月12日に下された。実質的に中国の全面敗訴となり、中国は仲裁手続を一貫して欠席し、裁定を前提とした交渉を拒否すると述べた。
 この仲裁は国連海洋法条約の解釈適用のみ扱う権限があるため、南シナ海の領有紛争は扱わない。また中国の管轄除外の宣言により、歴史的権原や境界画定の問題も扱っていない。裁定の拘束力は紛争当事国にのみ及ぶものではあるが、裁定の中身は周辺の沿岸国の今後の交渉上の立場にも大きな影響をもちうる。同時に、初めて明示した島と岩との区別の基準が諸国によって受け入れるようになれば、日本の沖の鳥島や竹島問題にも影響しかねない。
 そこで本特集では、まず仲裁裁定の中身を法的に精査しつつ、実施の展望と中国が主張する歴史的権利をも視野に収めて国際法上の意義について論じた。さらに、南シナ海が中国にとってどういう戦略的意味をもっているか、歴史を踏まえつつ、今後のアジアの海洋秩序の構築のために裁定をどのように利用していくかという観点からも考察を深めた。「法の支配」の尊重を中国に求めるのは当然であるが、それは「南シナ海裁定の遵守」の要求をも含むものとなるであろう。それゆえ、東シナ海問題における中国の新たな動きにどう対応するかを検討するうえでも、南シナ海裁定はひとつの出発点となる。

焦点:南シナ海比中仲裁後のアジアの海

<次号特集のお知らせ(2017年4月号)>
焦点:「苦悩する欧州」(仮題)
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◆編集委員会:浦田秀次郎(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授)、遠藤貢(東京大学 大学院総合文化研究科教授)、奥脇直也(明治大学法科大学院法務研究科専任教授)、古城佳子(東京大学大学院・総合文化研究科教授)、高橋伸夫(慶應義塾大学教授)、中山俊宏(慶應義塾大学 総合政策学部 教授)、深川由起子(早稲田大学大学院経済学研究科教授) (50音字順)