
CSCAP北太平洋作業部会第7回会合の開催
菊池 努
CSCAP北太平洋作業部会(NPWG)の第7回会合が、山本吉宣(東京大学)、ブライアン・ジョブ(ブリティッシュ・コロンビア大学)両共同議長のもとで、CSCAP国際運営委員会に先立つ12月9−10日、フィリピンのマニラで開催された。この会合には韓国、北朝鮮、日・米・中・露、モンゴル、カナダなどを含め、18のCSCAP委員会から40人を超える専門家が参加した。また、台湾からも2名の学者が参加した。
本作業部会はこれまで、いわゆる「2+4」のすべてを含む(full house)唯一の政治安全保障対話のフォーラムであったが、今回も関係当事者すべての参加が得られた。前回の会合(2000年6月、ウランバートル)は南北首脳会談の直後という絶好のタイミングで開かれたが、その際に、朝鮮半島情勢の急展開に鑑みて、12月に予定されている国際運営委員会の機会を利用して朝鮮半島情勢を検討すべきであるとの判断に基づいて今次会合が開催されたものである。CSCAP日本委員会からは山本共同議長、小澤俊朗・事務局長他が参加した。
会合では、はじめに過去半年間の朝鮮半島情勢に関する北朝鮮および韓国のペーパーが報告された。北朝鮮のペーパー(軍縮平和研究所)は、6月の首脳会談以降、南北間で多面的な対話と協力が進展していること、域外国や国際組織の間で南北関係の進展を促す機運が生まれていることを評価した。また、南北関係(統一)のあり方として、「低いレベルの連邦制」、すなわち「一民族・一国家、二システム・二政府」が望ましいとの立場を表明した。一方、韓国ペーパー(外交安保院)は、南北首脳会談の意義を評価しつつも、南北の合意を「具体的な実施計画」に変えてゆくこと、とくに南北間の信頼醸成措置実施の重要性を指摘した。また、最近の韓国経済低迷の結果、北朝鮮への経済援助よりも国内の経済再建に資源を投入すべきであるとの意見が韓国内で強くなっていること、南北関係の進展とともに、米国を含めた三ヵ国の関係が一層複雑になっていること、などを指摘した。
報告に続いて、南北関係の進展と朝鮮半島でのアメリカの役割、米・南・北三ヵ国の関係と四者会談との関係、北を国際社会に組み入れる上での中露の役割、日朝関係の行方、韓国の内政・経済状況が南北関係に与える影響、90年代初頭の南北合意を履行することの重要性、などについて活発な議論が行われた。
第2セッションでは、朝鮮半島での新しい事態を踏まえて、それを北太平洋やアジア太平洋の安全保障の枠組みづくりにいかに繋げてゆくかという問題意識の下に、CSCAPの役割を検討した。フィリピンのペーパー(バヴィエラ博士)は、これまでの北太平洋作業部会の活動をレヴューし、北朝鮮を含む関係者すべての参加する対話の場を提供してきたことなどを高く評価した。またカナダ・ペーパー(ジョブ教授)は、北東アジアの安定のためには、三つのレベル、すなわち政治・安全保障、経済協力、社会文化での関係強化が重要であると指摘し、南北の安全保障関係が安定した際には、北朝鮮をアジア開発銀行などの地域経済協力組織に加盟させることが重要であると指摘した。
また、本作業グループが、朝鮮半島情勢に関する議論を深めるための情報発信機能を強化すべきであるとして、Websiteの設置などを提案した。両報告に続き、NPWGの新しい課題、他の作業部会との連携、ARFの機能と役割、地域レジーム強化に際してのグローバルなレジームの役割、エネルギー、環境、食糧等の問題への取り組み、などについて議論が行われた。
本会合を含む過去数回の会合に提出された論文を取りまとめて2001年春ごろを目途に出版の予定である。本作業グループの次回会合の日程は未定であるが、CSCAP欧州委員会より2001年度に欧州(ロンドン)において本会合をホストしたいとの申し入れがあり、今後両共同議長と欧州委員会との間で開催化可能性を検討する予定である。最後になったが、今回の会合にあたってヘルナンデス教授をはじめとするフィリピン委員会にお世話になった。記して謝意を表したい。
(アジア太平洋研究センター客員研究員)
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