「CSCAP・北太平洋ワーキング・グループ」会合の開催  (菊池 努)

 去る1月31日―2月2日、カナダのバンクーバーにおいて、「CSCAP(アジア太平洋安全保障協力会議)北太平洋ワーキング・グループ」の会合が開催された。今回の会合は、同作業グループとしては、東京会合に続く2回目の会合である。 日本委員会からは、山本吉宣教授(東京大学教授:ワーキング・グループ共同議長)、高橋邦夫・当研究所研究調整部長他が参加した。また、NIRA(総合研究開発機構)から2名の研究員がオブザーバー参加した。
 会議では、「北東アジアにおける安保対話のメカニズム」、「北東アジアにおける紛争管理のメカニズム:東南アジアの経験とその意義」、「北東アジアにおける経済と安全保障協力」、「北東アジアにおける信頼醸成措置」の4つのテーマに関して、カナダ、韓国、インドネシア、日本、中国、北朝鮮の各メンバー委員会より提出された報告をもとに、活発な議論が行われた。
 北東アジアの安全保障対話の重要性が説かれながらも、この地域の緊張状態を反映して、これまで関係諸国が一堂に会して共通のテーマに関して議論する機会をもつことは困難であったが、今回の会議では、CSCAPへの中国参加問題が昨年12月の国際運営委員会で決着し、さらに、ニューヨークの北朝鮮代表部を通じての、エバンス(トロント=ヨーク大学共同アジア太平洋研究所所長)・山本両共同議長の半年以上にわたる北朝鮮委員会との粘り強い折衝の結果、中国、北朝鮮両委員会の参加をえることができ、しかも、中華台北(台湾)からも2人の学者の参加を実現することができた。 この結果、今回の会合は、いわゆる2+4(韓国、北朝鮮+日、米、中、露)にインドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピン、EU委員会、台湾の参加者を加えた会合を開催することができた。この点は、さまざまな組織や機関がこれまで行ってきた北東アジアの安保対話のプロセスの中で特筆されるべきことであろう。
 会合にはまた、「リソース・パースン」として、梅津至・朝鮮半島エネルギー機構(KEDO)事務局次長が特別に参加し、KEDOをめぐる最近の動きについて関係者に非公式にブリーフィングを行った。梅津氏は、かつて当研究所の所長代行として、CSCAPの設立準備に深くかかわった方である。
 北東アジアの緊張した情況から、今回の会議の円滑な運営を危ぶむ声も一部にあったが、参加者がいずれも「対話」を重視し、相互に抑制のとれた姿勢を示したことは印象的だった。深刻な対立点は残るものの対話を継続することの重要性については共通の認識がみられ、関係国が一堂に会した最初の会合としてはきわめて有意義なものであったといえよう。当面は、関係諸国の対話を可能にする「共通のテーマ」を辛抱強く探しだし、関係諸国の間に「対話の慣習」をつくり上げる努力が重要である。そうした忍耐強い努力を通じて、この地域に安全保障協力に関する共通の認識が生まれることを期待したい。
 なお、次回の会合は本年の後半に日本で開催する予定である。また、今回の会合の概要は山本先生の手でとりまとめられ、6月の国際運営委員会に提出される予定である。なお、今回の会合に際して、参加者一同のために夕食会を催してくださった野坂総領事の御厚意に感謝申し上げます。

(アジア太平洋研究センター客員研究員)

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