
CSCAP国際運営委員会・総会 (星野俊也)
去る6月3―4日、シンガポールにおいてCSCAP(アジア太平洋安全保障協力会議)の第7回国際運営委員会と第1回総会が開催された。
本ニューズレターでも随時報告している通り、CSCAPは1994年6月に発足して以来、域内の各国・地域の有識者、実務経験者、政府当局者(外交、防衛担当)が個人の資格で集まり、地域の多様な安全保障問題や信頼醸成のあり方について「トラックII」の自由な立場から活発な議論や研究を進める国際機構として、これまでもASEAN地域フォーラム(ARF)など政府間の安全保障対話の場に積極的な提言や知的協力を行ってきているが、従来からの国際運営委員会や作業部会に加え、今回初めて総会が開催されるにあたり、その活動に新たな弾みがつけられたといえる。
実際、本総会ではCSCAPに正式加盟する日、米、中、加、豪、韓国、北朝鮮、ロシアおよびブルネイを除くASEAN6カ国の各メンバー委員会と準加盟のインドおよびEUからハイレベルの政府関係者も含め、多数の専門家が個人の資格で参加し、自由かつ率直な意見交換を行い、所期の成果をあげたものと考えられる(都合によりモンゴルのみ欠席)。
本総会にCSCAP日本委員会からは松永信雄委員長とともに総会ゲスト・スピーカーとして柳井俊二外務審議官、西原正防衛大学校教授が参加し、CSCAP日本委事務局の桂誠事務局長および筆者他が同行した。(なお、国際運営委員会には山本吉宣・東京大学教授がCSCAP北太平洋作業部会の共同委員長の立場で参加している。)
総会ではまずCSCAP共同議長の松永委員長より、全地域的なメンバーでの議論を通じ政府間での安全保障協力を推進するための政策決定に寄与する本総会の意義を語る開会の辞があり、続いて主催国シンガポールのトニー・タン副首相兼国防大臣の基調演説が行われた。
演説で同副首相はアジア太平洋地域の更なる経済成長には平和と安定の維持が不可欠であり、そのために域内の主要国たる日米中の協力関係が重要であること、強力な二国間関係とASEAN、ARF、APEC、FPDAなど多国間協力の枠組みとを相互に織り込んで対応するべきことなどを語る一方で、トラックII組織としてのCSCAPに斬新なアイデアを強く望みたいとの期待の表明があった。
その後のセッションでは北東アジア情勢、東南アジアおよび南西太平洋情勢、新たな安全保障問題、安全保障対話の将来が議論された。
北東アジア情勢に関してはChenJian中国外務次官が米、中、ロ、日、ASEANと多極化の進む地域にあって、米中間の安定的な関係、国交正常化25周年を迎える日中関係、年末のASEANプラス3首脳会議への期待や中ロ関係、香港返還、中台関係に関する中国の立場および朝鮮半島、南シナ海問題への対応などで建設的なトーンでの演説を行った後、西原教授や南北朝鮮関係者からの率直な発言にフロアからの質疑も加わり、熱心な議論が行われた。
東南アジアに関しては新たにASEAN-10時代を迎えての可能性と挑戦が語られ、また、新たな安全保障問題については国際犯罪やテロなどへの国際協力を論じた柳井外務審議官の基調演説の後、有益な議論に発展した。
そのほか、昼食会ではカート・キャンベル米国防次官補が講演し、中国への積極関与政策、日米安全保障体制の堅持、米軍の前方展開、中台間の平和的な関係、朝鮮半島情勢の安定化に向けた米国のアプローチやその背景にある考え方などが語られた。
本総会の前日の6月3日に国際運営委員会が開催され、前回(96年12月)以降に行われた各作業部会の活動報告や新たな研究分野の検討などが行われた。
なお、今回の国際運営委員会においてノルディン・ソピー・CSCAPマレーシア委員会委員長(マレーシア戦略国際問題研究所会長)が全会一致で共同議長に選出された。
今回の議長の交代は、共同議長の一人であるユスフ・ワナンディ氏(インドネシア)の任期満了に伴うものであり、その任期は2年。
ここに松永、ノルディン両共同議長による体制が成立し、一方ワナンディ氏に対してはCSCAP発足から初代共同議長として活躍した3年間の貢献に運営委員会参加者一同がみな起立し、拍手をもって感謝の意が表明された。
本運営委員会ではまた、現在準メンバーとなっているインドおよびEUについて正式メンバー化するとの案を検討することや、次回会合を来る12月18日、東京にて開催することなどが合意された。
(アメリカ研究センター主任研究員)
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