
CSCAP信頼醸成措置作業グループによる原子力専門家会合報告 (黒田 裕幸)
1月26日(火)から29日(金)まで、アメリカ・ニューメキシコ州アルバカーキで、CSCAP信頼醸成措置グループの第2回原子力専門家会合が開催された。この会議は、アジア太平洋地域の原子力政策の透明性の向上と信頼醸成のため、どのような原子力情報共有体制が構築できるかを検討するためのものである。
昨年10月に同所で第1回会合が開催され、アメリカ、カナダ、中国、台湾、日本の代表が参加し、原子力の透明性の向上のためにどんな情報が必要かを参加者全員でブレーンストーミングし、意見交換を行った。その結果、大気中の放射線量、原子力施設の安全運転、核物質輸送の安全性など七つの項目について情報共有を行う必要があるとのことで意見が一致した。
そこで今回の会議では、こうした七つの項目について、具体的にどのような形で情報共有を行っていくかについて論議をした。今回の会議には前回出席した国・地域に加え、韓国、ロシアの専門家が出席した。この会合の事務局を務めるアメリカのサンディア国立研究所内の協力モニタリングセンター(CMC)が、情報共有体制の一つとして、ホームページによる情報共有案を考え、それについて参加者全員で検討・論議を行った。
ホームページの主な内容は以下のとおり。
- 大気中の放射線量
原子力発電所内に設置されたモニタリングポストから大気中の放射線量をリアルタイムで確認する。
- 原子力施設の安全運転状況
遠隔操作によるモニタリング(ビデオイメージ)、放射線量や運転状況の基礎データを共有することにより原子力施設の安全性を確認する。
- 核物質輸送の安全性
ヨーロッパから日本への核物質・高レベル廃棄物輸送船のルートや船上の放射線レベルをリアルタイムで情報提供するもの。これは、公海上の位置を確認するグローバルポジショニングシステム(GPS)に輸送船上の温度や放射線量を感知できる装置をつけたAuthenticated Tracking and Monitoring System(ATMS)というシステムを利用して、衛星インマルサットを経由してホームページに情報提供する。
これに加え、前回会議でアジア太平洋地域の「原子力白書」なるものを作成したいとの意見があったため、私より日本の原子力白書を紹介した。原子力白書の今後の作業については、とりあえず、ホームページ作成を優先し、もし白書も必要であればホームページの中に掲載することで意見が一致した。
さらに、このホームページ中に今までのCSCAP CSBM会議で発表された原子力の地域協力に関する論文が検索できるページを設ける予定であることから、そのページと昨年10月PECC日本委員会が主催した「沖縄エネルギービジネスフォーラム」で発表された論文集(特に原子力の地域協力に関する発表原稿)とをリンクさせることを私より提案し、了承された。
(沖縄エネルギービジネスフォーラムの論文集は、PECC日本委員会ホームページに現在作成中である。)
2回の会合を通じて特に感じたのは、英語により提供される日本の原子力情報が少ないということである。
たとえば、今回案として提示されたホームページの中に日本の電力会社のホームページ(英語)とリンクしているところがあるが、日本の電力会社のホームページより提供される英語の原子力情報は、日本語のそれに比べて非常に少ない。
今後は海外を視野に入れた情報提供、ホームページのリンク化などを検討していく必要があるのではないかと考える。
一方民間側も、情報公開の一手段として原子力発電所のモニタリングポストのデータ公開などの準備を進めていることから、今回論議されたホームページへのデータ提供の実現性が高くなっている。
そのため、原子力政策の透明性の向上を図り、アジア太平洋地域における原子力発電開発をリードする上からも、日本が官民協力して、今回論議されたホームページに積極的に情報提供することは重要であると考える。
(太平洋経済協力会議(PECC)日本委員会事務局事務局長代理)
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