CSCAP信頼醸成措置作業グループ会合報告 (黒田 裕幸) 

 5月25日火から27日木まで、韓国・ソウルにて、CSCAP信頼醸成措置グループ会合が開催された。 同信頼醸成措置グループでは、アジア太平洋地域の原子力発電政策の透明性の向上と信頼醸成を目的とした情報共有体制を検討してきた。つまり昨年10月と今年1月にアメリカ・アルバカーキーに原子力発電の専門家を集め、具体的な情報共有体制を検討した。第1回会合では、原子力情報の透明性向上のためにどんな原子力情報が必要かを参加者全員でブレーンストーミングし、大気中の放射線量、原子力施設の安全運転、核物質輸送の安全性の確認など7つの項目について情報共有を行う必要があることで意見が一致した。 第2回の会合では、前回の論議を踏まえ、アメリカ・サンディア国立研究所の協力モニタリングセンター(CMC)が情報共有案として作成したホームページを検討・論議した。

 今回のソウル会議では、過去2回の専門家会合の論議を踏まえこのホームページ案について論議を行った。 最初にこのホームページ案を作成したアメリカのオルセンCMC研究員、コッサCSBM共同議長より、ホームページ案の説明があった。その中で、第1段階としてパンフレットなどで紹介されている情報を利用したり、既存のホームページとのリンクから始め、第2段階として、各国・地域の電力会社などが持っている情報の公開(たとえば、各原子力発電所のモニタリングポスト(大気中の放射能監視測定器)データの公開など)を行い、第3段階として遠隔装置のカメラなどを用いて、原子力施設のモニタリングを行っていきたいとの説明があった。

 ホームページ案の説明後、中国代表者よりホームページ研究体制に対して非難の声が上がった。 おりしも、アメリカにおける中国原子力技術者のスパイ疑惑が報道された時期であり、スパイ疑惑が発生したとされるロス・アラモス研究所がこのホームページ案作成に関係していることから、「こうした研究所の作成した案をCSCAP CSBM会議で検討するに値するであろうか」と不快感を表明した。さらに中国代表者は、こうしたホームページを始めると、アメリカが原子力関連情報の提供を強要するのではないかという疑問を呈した。これに対してコッサ共同議長や原子力専門家会合に出席したメンバーより、このホームページ作成の目的や情報の提供内容などを詳細に説明したところ、中国関係者も理解を示した。 他の出席者からはホームページ案に賛同する声が多く聞かれ、各国・地域の原子力発電情報を提供してくれることとなった。特に今回初めて参加したモンゴル、ベトナムの原子力関係者(ともに両国原子力委員会副委員長)は、両国において現在原子炉は存在しないため、原子力発電情報は不足しており、こうしたホームページは原子力発電を将来のエネルギー源として検討する際、大変有益であるとのコメントがあった。

 会議後、コッサ共同議長が7月中旬に来日し、日本の原子力関係者にこのホームページ案を説明し、コメントいただくとともに、ホームページへの情報提供をお願いしたいとの連絡があった。 同氏は日本の原子力発電の情報公開体制や今までの実績を高く評価しており、このホームページ案を運営する上で、日本の関係者の協力は不可欠と考えている。そこで現在CSCAP日本事務局では、関係官庁をはじめ、電力関係者との日程調整を行っている。

(太平洋経済協力会議(PECC)日本委員会 事務局長代理)


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