第11回CSCAP国際運営委員会 (中山 俊宏) 

 去る5月29日、クアラルンプールにて、第11回CSCAP(アジア太平洋安全保障協力会議)国際運営委員会が開催された。当研究所が事務局を務めるCSCAP日本委員会からは、松永信雄CSCAP日本委員長(当研究所副会長)、小澤俊朗当研究所所長代行、菊池努当研究所客員研究員(青山学院大学教授)、筆者が参加し、モンゴル、準メンバーであるインドを除く計16カ国(マレーシア、インドネシア、フィリピン、タイ、シンガポール、ベトナム、韓国、北朝鮮、中国、米国、ロシア、カナダ、豪州、ニュージーランド、日本、EU)が出席した。

 CSCAPはアジア太平洋地域の安全保障をめぐる諸問題の研究・調査を重点的に行い、その活動を通じて「安全保障コミュニティ」作りに貢献することをその活動の趣旨としているが、本運営委員会はCSCAPにおける最高の意思決定を行う組織で年2回開催されている。 共同議長は、CSCAP韓国委員会の韓昇洲(ハン・スンジュ)元韓国外相と欠席したノルディン・ソピーCSCAPマレーシア委員長(マレーシアISIS会長)に代わり、キャロライナ・ヘルナンデスCSCAPフィリピン委員長(フィリピン大学教授)が務めた。 なお、ヘルナンデスCSCAPフィリピン委員長は、ソピーCSCAPマレーシア委員長の後任としてASEAN諸国からの共同議長に選出された。(CSCAP議長には、ASEANおよび非ASEAN諸国から1名ずつが就任することが慣例化しており、非ASEAN側の議長は、任期がもう1年残る韓昇洲CSCAP韓国委員長が引き続き務める。)

 主要討議事項は、CSCAPホームページ(http://www.cscap.org/index.htm)の拡充、新規メンバー国加盟問題につき討議が行われた後、5つの国際作業部会(信頼醸成、包括的協力的安全保障、海洋協力、北太平洋安全保障協力、国際犯罪)の各共同議長より作業状況につき報告がなされた。 さらに、本年12月にソウルで開催される国際運営委員会と合わせてCSCAP総会を開催することを決定した。

 なお、今次運営委員会からは運営上の取り決めに関する討議のほかに、実質的問題に関する討議を行うこととなり、「米中関係と北東アジアの安全保障」、「東南アジアの安全保障の強化」、さらに緊急に「コソボ問題のアジア太平洋へのインプリケーション」に関し討議が行われた。 米中関係のセッションにおいては、松永CSCAP日本委員長ほかより報告がなされ、松永委員長より、米中関係の改善がアジア太平洋地域の安定と繁栄の鍵となること、また日米防衛協力のためのガイドラインを含む日米同盟が特定の敵を想定しているものではなく、あくまで防衛的な取り決めであることが強調された。コソボのセッションにおいては、EU・CSCAPより報告がなされ、コソボ紛争によって提起されたヒューマニタリアン・インターヴェンションの問題につき協議が行われた。 同問題については、在ユーゴ中国大使館の誤爆撃事件を受けて米国と中国との間で緊張感が伴う議論も展開されたが、今後も引き続き信頼醸成作業部会にて協議を続けることとなった。

(アメリカ研究センター研究員)


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