CSCAP(アジア太平洋安全保障協力会議)日本委員会総会 (中山 俊宏) 

 去る7月30日、松永信雄CSCAP日本委員会委員長(当研究所副会長)、小澤俊朗CSCAP日本委員会事務局長(当研究所所長代行)、平松賢司・外務省総合政策局安全保障政策課長のほかにアジア太平洋地域および安全保障問題の専門家によって構成されるCSCAP日本委員会から約20名ほどの出席を得て、CSCAP日本委員会総会が当研究所にて開催された。

 まず、第6回ARF閣僚会合に参加し、前日シンガポールより帰国したばかりの平松課長より、同会合の模様につき報告が行われた。右報告によれば、アジア太平洋地域が不安定な要素を多分に抱えるなか、今回の会合においては、いままでの会合とは変わって、北朝鮮情勢、インドネシア情勢をはじめとする東南アジア情勢など各議題ごとにかなり踏み込んだ議論が行われたとのことであった。 さらに、昨年の同会合がアジアの経済危機の真っ只中に行われたこともあり経済問題中心の議論であったのに対し、今年はARF設立趣旨にもとづき、主として安全保障関係の議論が活発に行われ、ARFの本来の目的のひとつである信頼醸成に大きく貢献したとの感想が述べられた。 このような意見の交換から、問題の本質的な解決への道筋をどう見つけていくかが今後ARFに課された大きな課題といえよう。

 つづいて、小澤事務局長より第11回CSCAP国際運営委員会の模様(ニュースレターNo. 90/1999年7月号参照)につき報告があり、さらに各CSCAP国際作業部会担当研究員より作業部会の活動状況につき報告がなされた。 海洋協力作業部会については星野俊也・当研究所客員研究員(大阪大学助教授)より報告が行われ、同作業部会で合意した海洋協力のガイドラインがARF・SOMに提出され、歓迎されたこと等につき報告があった。 信頼醸成作業部会のもとで行われているアジア太平洋地域における原子力の平和利用と核の不拡散に関するワークショップについては、担当の黒田裕幸研究員(現東京電力)に代わり、星野研究員より、各国の原子力政策の透明性を高めるべく試みられている諸々の活動につき報告がなされた。 つづいて小澤事務局長より包括的安全保障協力作業部会における議論が紹介され、若干議論が停滞気味であることが指摘され、そもそも包括的安全保障という概念の曖昧性が問題であることがその原因となっているのではないかとの問題意識を表明した。 北太平洋作業部会については、山本吉宣共同議長(東京大学教授)に代わり菊池努・当研究所客員研究員(青山学院大学教授)より報告があり、すでに4回開かれた同作業部会には南北朝鮮およびオブザーバーである台湾を含む主要メンバーが出席しており、本年9月東京で開催すべく準備を進めている旨の報告があった。 国際犯罪作業部会については山田哲也・当研究所研究員より、銃器・小火器の不正違法な取り引き、麻薬、経済犯罪につき協議がなされている旨の報告があった。 信頼醸成作業部会予防外交ワークショップについては筆者が報告し、同ワークショップで策定し、ARF・ISGにレコメンデーションというかたちで提出した予防外交の定義と原則につき報告をした。

 最後に松永委員長より、インド・パキスタンの核実験、北朝鮮のミサイル発射、コソヴォ以降の米中関係の悪化がアジア太平洋地域における緊張を高めており、CSCAPにおける議論がより具体的な事実に即したかたちで進められていくべきだと考える旨を述べた。 さらに北朝鮮を国際社会に巻き込んでいく場としてもCSCAPの役割がますます高まっていくのではないかとの意見が表明された。  本年12月、ソウルにてCSCAP総会が2年半ぶりに開催される運びとなっているが、アジア太平洋地域におけるトラック2外交のあり方そのものを再検討し、より有意義な対話の場としての役割を再確認する絶好の機会となることが期待される。

(アメリカ研究センター研究員)


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