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12月9日から10日にかけて、イエメン沖を航行中の「国籍不明船」をスペインとアメリカの軍艦が検査したところ、北朝鮮からイエメンに輸出されるスカッドミサイル15基が発見された、というニュースがあった。結局、この船は放免され、ミサイルはイエメンに輸出されることになったのだが、「なぜスペインとアメリカの軍艦が国籍不明船を検査できるのか」、そして「なぜミサイルは輸出されてしまったのか」。

公海を航行する船舶は、その船の国籍(船籍)を示す旗(国旗)を掲げなければならないことになっている。この規定は国際慣習法であるとされるが、現在では公海に関する条約第6条や国連海洋法条約第92条に明文の規定もある。しかし、この船は国旗を掲げていなかったのである。

そこでスペインとアメリカの軍艦が「船籍を確認する」という目的のために「臨検」を行った。臨検とは、公海を航行中の軍艦が、同じ公海上で海賊行為を行っていたり、奴隷取引に従事していたり、といった一定の理由がある船舶を発見した場合にとることが認められる警察行動である。これも国際慣習法であるが、国連海洋法条約第110条でも、外国船舶が国籍を有していない(つまり無国籍船)という疑いがある場合の臨検を認めている。

但し、今回の臨検の目的は、あくまでも書類の検査などを通じた「船籍の確認」に限定され、それ以外の犯罪(海賊行為や奴隷取引など)を行っているという証拠や他の国際法上の根拠が無かったため、それ以上の行動が取れなかったものと思われる。北朝鮮によるミサイル輸出や、中東諸国へのミサイルの拡散は今日の国際情勢の大きな懸念ではあるが、それらを直接取り締まる条約上の根拠がないために、アメリカもこの船舶を解放せざるを得なかったのである。

もし、この北朝鮮国籍の船舶がきちんと国旗を掲げていたら、臨検を受けることはなかったことになる。歴史的に、公海上の船舶には「航行の自由」を認めるのが原則として確立しており、臨検といった第三国による制限を認めることのほうが「例外」となっていることの帰結である。(TY)



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