活動記録

レー・ヒュウ・ギア ベトナム中央理論評議会常任副議長 講演
「ベトナム経済の展望と通商関係」

Photo:レー・ヒュウ・ギア



2004年5月10日、日本国際問題研究所において、レー・ヒュウ・ギア ベトナム中央理論評議会常任副議長(兼「コン・サン」誌編集長)による、表記講演会が開催された。


レー・ヒュウ・ギア氏略歴:
1947年生。グエン・アイ・クゥォク党学校大学院、旧ソ連社会科学アカデミー大学院で学ぶ。ハノイ経済・計画大学、ホー・チ・ミン国家政治学院副院長、共産党中央委員会委員を歴任、2003年6月より現職。哲学博士。

講演要旨

ベトナムはドイモイから17年が経過し、2002年までに170カ国と外交関係を樹立し、86カ国と通商協定を結んでいる。また70カ国が対ベトナム直接投資の実績を有し、ODA供与国は45カ国に上る。本年10月には第5回アジア・ヨーロッパ協力会議がハノイで開催される予定であり、WTOへの2005年加盟を目指し、世界経済への積極的な参加を図っている。

ベトナム経済は1990年代平均6.7%の成長を達成し2003年には7.2%のGDP伸び率であった。対外貿易は2002年実績で364億ドル(輸出167億ドル、輸入197億ドル)を記録し、また対ベトナム直接投資は、1988年外資法導入以来順調に増加し、2002年までに4447件、430億ドルの実績を記録している。(2002年単年では、754件15億5700万ドル)これらの要因として、政治的安定、正しい政策が挙げられる。だが低い水準の経済ストックと競争力、初歩段階の市場経済がベトナムの弱点であり、また今後ダイナミックな経済制度の改革が課題である。

ベトナムは2020年までに中進工業国となる目標を掲げ、2005年までの5カ年計画では年8%の経済成長率を見込んでいる。その中で重点項目として、国際経済へのさらなる参加、二国間・多国間貿易協定の締結、(外資を含む)すべての企業に健全かつ平等な活動環境を保証、透明性の確保を掲げている。また市場経済化の一環では、国営企業のリストラを進め、多様な資本形態を目指している。

日本−ベトナム関係は非常に良好で、2003年9月には国交樹立30周年となった。日本はベトナムにとって最大の貿易相手国(2003年輸出入合計63億ドル)・ODA供与国である(2003年までに87億ドル)。直接投資は、2003年までに354件50億ドルに上る。だが日本の貿易・投資に占めるベトナムの割合は、他のASEAN諸国に比べ非常に低いことから、今後これらの数字を高めるために、政策の透明性・一貫性の向上などを通じ、魅力ある投資環境作りに努力する方針である。

質疑応答

・ WTOとFTA政策について
ベトナムの基本方針は、2005年のWTO加盟を最優先としている。FTAに関心はあるが、本格的に動くのはWTO加盟達成後となる。日・ASEANのFTAについては、まずASEAN内の先行国が日本とFTAを結び、ベトナムはその次の段階となろう。
FTA締結によってベトナム国内の地場産業などへの影響は避けられないだろうが、ベトナム経済の一層の発展には不可欠なプロセスであると考える。
・ 中国の影響
中国の発展はベトナムの製造業などを圧迫している。今後中国に対抗するために、この分野の直接投資を歓迎する。特に中国とASEANのFTAに関して、中国市場をターゲットとした直接投資を引き入れなければならない。このためにも原産地規則を緩くする必要がある。
・ 党の経済への関与
党の経済への介入は控えるべきことは自覚しており、法治国家として、党は法の枠内で指導を行う。さもなければ、国際社会の理解を得られないことを認識している。
経済5カ年計画は、経済成長率についての単なる目標であり、外国企業に対する拘束は皆無である。また価格の自由化について、電気料金など国民生活に直接的影響のあるものには、勝手な値上げを防ぐという観点からコントロールは存在する。だが補助金は撤廃している。外国人の土地売買はまだ解禁していないが、不動産市場が形成されつつある。今後この点についても、政策整備をすすめる
(以上)