外務省の賓客として来日中のアフガニスタン・イスラーム共和国外務大臣アブドラ・アブドラ氏は2005年5月19日、都内ホテル・オークラで行なわれたJIIAフォーラムで「アフガニスタンの復興、開発、外交政策」と題して講演した。アブドラ外相はこの中で①アフガニスタンの歴史、②これまでの復興プロセス、③現状について、次のように述べた。
アフガニスタンの歴史について
アフガニスタンはその歴史において繰り返し外部から侵略を受けたが、タリバンやアルカイダの跳梁は長い歴史においても最大の悲劇のひとつに数えられる。その背景には、国際社会が共産党政権崩壊後のアフガニスタンに対して無関心になった状況がある。アルカイダのような組織の活動を二度と許さないためにも、国際社会がアフガニスタン復興・再建に関心を抱き続けることが重要である。
復興の歩み
2001年12月のボン合意から現在に至るまでアフガニスタンの復興は着実な歩みを遂げてきた。ボン合意の重要性は、アフガニスタン国内の諸勢力が同国の平和と復興のために政治的合意に達したこと、そして国際社会がアフガニスタン復興への協力と協調に合意した点にある。アフガニスタン復興に対する国内外の強固な決意によって、その後の復興は大きく前進した。例えば、憲法制定や、先日実施された初の民主的大統領選挙がその証左である。また、ボン合意が政治的合意のメルクマールとすれば、2002年1月に東京で開催された復興支援会議、いわゆる東京会議はアフガニスタン復興の出発点と位置付けることができる。日本政府が東京会議を開催したこと、アフガニスタン支援に努力していることは高く評価している。
さらに復興の成果の具体例として、教育面での状況の改善が挙げられる。タリバン政権は教育制度を破壊したが、これを再建するために、日本や米国からの援助によって、多数の生徒を学校に呼び戻すことに成功した。特に、タリバン政権が教育の機会を剥奪した女性については、改善が顕著である。現在では、学生を呼び戻すという段階から、教育の質を検討する段階に移っている。すなわち、職業訓練や卒業後の雇用など、国内開発とどのように結びつけるのかということが重要となっている。
現状
アフガニスタンはいま、これまでの古い秩序や規則を見直し、新しい秩序・規則をどのように実施してゆくのかを検討中である。安全保障、治安問題に関しては、国際社会の協力の下で、国軍と警察の育成、麻薬対策などが重点的に進められている。また、国内開発の分野では、電力不足や道路の未整備などの諸問題を抱えているが、農村開発やインフラ整備計画などが着実に進展中である。アフガニスタンは今後も国際社会との協力・協調を引き続き重視していく。単に自国の復興や利益を追求するだけではなく、国際社会の一員として協調・協力し、さらには貢献することを目指す決意である。
アブドラ外相の講演後、約120名の聴衆から、アフガニスタンの復興の現状や今後の見通し、地方軍閥や麻薬の問題、さらには日本の対アフガニスタン援助などについて、活発な質問が寄せられた。これに対して外相は、日本のアフガニスタン復興への貢献について、経済分野のみにとどまるものではなく、農村開発やインフラ整備を通じて国内治安向上にも寄与するものであるとして、高く評価。また、円借款の受け入れの有無に関する質問に対しては、アフガニスタン復興が無償支援から有償支援への移行を検討しなければならない時期にあるとし、円借款要請の可能性を示唆した。
以 上
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