第二期G・W・ブッシュ米政権の顔ぶれには変化があったが、対東アジア政策の基本路線に変更はない。これまでどおり、ブッシュ政権にとって東アジアは重要な地域であり、政治、経済、安全保障上の深い結びつきを維持・強化していくだろう。アメリカと東アジア諸国との首脳レベル、またライス国務長官等の政府高官レベルによる活発な交流が、今年もG8、国連総会、APEC首脳会議などの場においておこなわれることになっている。
米中関係
意外に思われるかもしれないが、ブッシュ政権は中国との関係強化に努め、米中両国間に「建設的で、協力的、そして率直な」関係を構築することを望んでいる。米中両国間に個別の問題をめぐって利害の不一致が生じることがあっても、直接的な対話によって関係の安定化を実現することは可能である。ブッシュ政権は中国政府との直接対話に熱心であり、一例をあげれば、政府高官レベルでの直接電話会談は、クリントン政権期よりもずっと盛んである。中国の勢力拡大は必ずしも軍事的脅威の拡大を意味するものではない。しかしながら中国政府は、アジア・太平洋地域においてアメリカや他の地域諸国を締め出す形での影響力の拡大を行うべきではない。また経済的には、中国の経済発展は今後も続くであろうが、今後はこれまでの輸出志向型の経済発展ではなく、内需の拡大による一層の発展を目指していくべきだろう。
日米関係
日米関係は今までも、そしてこれからもアジア・太平洋地域の平和と安定にとって極めて重要な関係であり、また同地域の安定が日米両国の国益にとっても必要である。日米関係は共通の価値観や原則に支えられているだけでなく、世界最大の経済大国同士のパートナーシップであり、両国の協力がアジアの一層の発展の可能性を切り開いていくのである。日本の安全保障に対するアメリカの関与を不安視する意見をあるようだが、アメリカは今後もいわゆる「核の傘」の提供を持続し、関与を継続していくだろう。
朝鮮半島情勢
朝鮮半島情勢に関しては、最近6者協議再開の見通しが報道され、協議の再開自体は好ましいことであるが、しかしその道のりは平坦ではないだろう。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)政府は、過去40年にわたって核の開発を追求してきたのであり、核問題の解決は決して容易ではない。北朝鮮の核問題は、(1)1990年代前半の第一次核危機以前に獲得されていた「古いプルトニウム」、(2)「最近処理されたプルトニウム」、そして(3)濃縮ウラン、という三つの観点から複合的に検討される必要がある。北朝鮮問題を中国政府に任せておくのではなく、日米韓などの関係諸国が共通認識を持ち連携してこの問題に取り組み続けていくこと重要である。ブッシュ政権は、北朝鮮問題の平和的解決を望んでおり、同盟国との関係を重視している。
以 上 |