9.11テロ攻撃は世界を震撼させた。しかし、今度の「事件」は単なる大惨事ではなく、国際関係の本質に迫る大きな問題を含んでいる。伝統的な概念での国際関係は「国際」という言葉が示しているとおり、主権国家同士の関係であった。その中で、国家間で行なわれる交渉が「外交」であり、あるいは国家間の争いごとの究極の形態として「戦争」というものがあり、また外国からの攻撃に対して自分の国を守るということが「国防」というものであり、「安全保障」であった。ところが、9.11テロ攻撃は、この伝統的な国際社会の関係性そのものに大きな影響を与え、国家の枠組みに必ずしも規定されない個人・集団・組織(非国家主体)が国防・安全保障の脅威の対象として認識されるようになった。また、非国家主体の脅威を新たな軸の一つとした安全保障政策や外交関係の形成といった新しい現象が生まれつつある。
本研究会は、テロ攻撃以降の事象を単に事件としてではなく、世界がどう変化しつつあるのか、その中で日本がどう変わらなければならないかという問題意識のもとに立ち上げ、9.11テロ攻撃に関わる事象を多角的に考察すべく、9月11日直後から研究会を重ねてきた。以下の論文は、この研究会の成果である。
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