「日・ASEAN安全保障協力に関する専門家による提言書」
日本とASEANが安全保障フォーラム設立へ トラック2が協力強化を後押し
去る12月にクアラルンプールで開かれた日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の 首脳会議の場で、日本とASEANが安全保障分野で今後いかなる協力を促進していくべきかを論じた提言書が提出された。この 提言書は昨年10月にシンガポールで行われた第3回日・ASEAN安全保障協力に関するワークショップ(日本国際問題研究所 とシンガポール防衛戦略問題研究所の共催)で、日本とASEAN各国の安保問題の専門家がまとめたもの。若干の解説を付して 、ここに提言書を公開したい。本ウェブサイト会員専用ページ「ホットライン」10号(http://www2.jiia.or.jp/attachments/hotline/2005/hotline20051007.pdf) で紹介したワークショップの概要と併せて読むと、一層理解が深まるだろう。 最大のポイントは日・ASEAN安全保障フォーラムの設立だ (7. Institutional Arrangements for Japan-ASEAN Security Co-operationの1.)。 いわゆるトラック2で地域の安保上の脅威について情報交換したり、合意済みの協力案件の進捗状況を確認したり、新たな協力分 野を開拓することを主眼としている。既に関係者間でフォーラム設立のコンセンサスが出来上がっており、早ければ今年の前半に も初会合が開かれる見込み。 10月のワークショップで共同議長を務めた宮川眞喜雄・日本国際問題研究所主幹は、新フォーラムは「これまでの議論を踏ま え、日本とASEANが関心を共有する安全保障分野で、双方にとってメリットがあり、また双方にとって受け入れ可能な運用面 (operational)での協力を模索する」ものになるとし、その設立の意義を強調する。 次のポイントは、東南アジアの海上における船舶の安全確保に向けて日本とASEANが協力をさらに強化していくということ である(1. Maritime Safety and Securityの1.)。具体的には、マラッカ海峡を念頭に置きつつ、共同で海上の警備や監視をし ていくことが提言されている。巡視艇の供与などを通じて、日本がより積極的な貢献を果たしていくことが求められているのも特 徴だ。 国際テロにどう立ち向かっていくかも当然ながら重要(2. International Terrorismの項)。従来から挙げられていた対策に加 え、今回の提言書ではテロリストが情報通信技術を駆使して流すプロパガンダを防ぐための方策を練るべきとの提言が盛り込まれ た。