JIIAフォーラム講演要旨

2005年 6月27日

浅井和子前駐ガーナ大使
「ガーナの経済発展 −アフリカのモデルとして−」

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ガーナは政治の安定および民主政治が確立されていて、経済発展の前提は整っている。国民の潜在能力は高く、経験を積めば大きく発展する可能性を秘めている。しかし、植民地主義のせいか自立心に欠け、産業政策も見るものがなく援助依存状況が続いている。日本や国際社会が援助を増額しても、ガーナ自身がこうした体質を改善しない限り、経済発展は困難だろう。

経済発展の推移

ガーナは1957年にイギリスから独立。1960年代にエンクルマ大統領の下、インフラ整備、農業、製造業、金融業など広範な経済開発に取り組んだ。ダム建設、カカオの生産増大、マッチからエレクトロニクスまでともいわれた製造業など目を引くものが多かったにもかかわらず、債務が膨らんでキャッシュフローに行き詰まってしまう。

また、社会主義政権だったが、独裁的な色彩が強まったため、国内の反対勢力が拡大。1966年から81年までの間に3回のクーデターによって共和制と軍政の繰り返しを経験した。政治不安に加え、カカオ価格の低迷や原油価格の高騰もあいまって、1970年代は経済が停滞・荒廃。ローリングズ大統領の軍政下の1983年から国際通貨基金(IMF)や世界銀行、日本を含む各国政府からの援助を受け始めるものの、国内産業の衰退、失業、援助依存を招く結果となってしまった。

政治・経済の現況

2000年12月の大統領選と国会議員選挙で、ローリングズ政権からクフォー大統領へと与野党が逆転。民主政治確立の証しとして、国際機関や各国政府から称賛された。2005年1月から第二期クフォー政権がスタート。政治は引き続き安定している。

2003年の一人当たりの国内総生産(GDP)は320ドル。2004年のGDP成長率は5.2%。予算収入のうち国内収入はわずか三割。残りは借り入れや援助でまかなわれているのが現状。産業構造としては、カカオ、金など鉱物資源の輸出など第一次産業が中心。ちなみに、日本のカカオ輸入の七割はガーナから。ボーキサイトの開発・アルミ製造が実現するのかどうか。

優秀な人材はいるが、国外で活躍する傾向が顕著。国連のアナン事務総長もそうしたガーナ人の一人。こうした「出稼ぎ」ガーナ人からの送金は年に20億ドルにも上り、ガーナ経済を支えている。植民地時代の名残からか職業意識が欠如している。国民は高い潜在能力を持ってはいるが、メンタリティー面での問題と経験のなさゆえ経営能力に欠けている。援助慣れにもつながってくるので、事態は深刻だ。

今後の課題と日本の対応

長期産業政策を策定し、援助資金を将来の自立のために使うべき。「IMFや世銀のプログラムに沿った経済運営をしていれば、債権放棄してもらえる」「どうやったらお金をもらえるか」いった発想を改めなくてはならない。

日本はアフリカ向けの政府開発援助(ODA)を今後三年間で倍増させる計画だが、援助が倍になったからガーナが倍豊かになるとは思わない。本当に必要なところに援助が届くようにしないと。

民間企業による産業育成を提案したい。資本金は日本のODAを使い、花、果物、野菜の大規模栽培やジュース、缶詰などの食品加工をやってみてはどうか。技術指導や経営を日本の民間が行い、現地の従業員に順次移管していく仕組みがよいと思う。

以 上