JIIAフォーラム講演要旨

2005年 8月 2日
於:霞が関東京會舘 シルバースタールーム

政策提言
Resolving the North Korean Nuclear Problem
A Regional Approach and the Role of Japan
(「北朝鮮核問題の解決:地域的取り組みと日本の役割」)
発表・説明会

代表出席者:小此木政夫(主査、慶應義塾大学教授)
倉田秀也(杏林大学教授)
道下徳成(防衛研究所主任研究官)

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日本国際問題研究所は北朝鮮の核開発計画の解決にどう取り組むべきかについて2005年7月、表記の政策提言(英文)をホームページ上で発表した。折りしもこの問題に関する米、日、中、韓、露、北朝鮮の6者協議が一年ぶりに北京で再開されたのを機会に、同協議の展望を含めて北朝鮮核開発問題の行方、解決の見通しなどについて政策提言の作成にあたった委員8人を代表して上記3委員がそれぞれ講演した。


倉田秀也(総論)

JIIA(日本国際問題研究所)は、2002年より再燃した北朝鮮核問題に対して、日本がどのように取り組むべきかという観点からポジション・ペーパー(政策提言)を作成した。

北朝鮮核問題の影響は、グローバル、リージョナル、そしてローカルの3段階のすべてにわたるものであり、その解決の枠組みは包括的なものとならざるを得ない。1994年の枠組み合意は第二次核危機で反故にされた形だが、その「精神」(北朝鮮による核放棄と米朝間の関係改善)は生かしていくべきだ。特に、北朝鮮に対する「安全の保証」が解決の鍵となろう。また米朝2国間ではなく6カ国という多国間での合意は、北朝鮮による違反のコストをいっそう大きくすることになる。

日本は、6者協議をベースとして、これに日朝国交正常化交渉を結び付けていくということを考えるべきだ。6者協議が進展する時、日朝交渉も進展し、拉致問題やミサイル問題の前進にもつながる。また、北朝鮮の核放棄の検証問題と日朝国交正常化交渉をいかに連関させるかということも重要である。

道下徳成(朝鮮半島の安全保障問題)

北朝鮮は、攻撃的な能力を保持することで、抑止力および安全保障を確保している。10年前の核危機の時には、日本を射程に収めるノドン弾道ミサイルは実験段階であったが、現在では100基程度配備していると見られる。北朝鮮は、ソウルに対する攻撃能力とともに、対日攻撃能力を付加することで、「懲罰的抑止力」を維持している。

日米韓が北朝鮮に求めているのは核兵器の放棄であるが、この3カ国は安全保障政策や対北朝鮮の脅威認識などについても調整を行っている。

日本は、「対話と圧力」という政策を維持している。「圧力」に関しては、PSI(拡散に対する安全保障構想)や不法行為の取り締まりの強化、ミサイル防衛の推進、さらには工作船への対応といったものがあげられる。安全保障措置の強化は、北朝鮮をめぐる情勢が悪化する際のヘッジであるとともに、外交的解決を後押しするものともなろう。

小此木政夫(6者協議と日本の対応)

米国は、強硬なレトリックを用いているが、安保理付託は考えていない。予想された以上に、6者協議による局面の打開に動いているという印象である。現状での安保理付託には、いくつかの問題点があり、危機をエスカレートさせるだけでなく、韓国との同盟関係や、米国の国内政治にも大きなインプリケーションを持つ。このため、「もう一度外交努力をしてみるべき」という態度になっている。

以 上