JIIAフォーラム講演要旨

2005年 8月 9日
於:都内ホテル・オークラ

ショーカット・アジーズ パキスタン・イスラム共和国首相
「最近の南アジア情勢と将来展望」

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南アジアには、国際テロ、カシミールをめぐる対立、核拡散の脅威などの問題が山積している。パキスタンはこうした問題の解決に努力している。また、南アジア、中央アジア、中東の接点に位置する地の利を生かして、経済活動の拠点(ハブ)にもなりうる。東アジアや東南アジアとも多面的な関係を構築していきたい。

国際テロ

南アジアにおける国際テロの源流は、一九七九年のソ連のアフガニスタン軍事介入にさかのぼる。ソ連軍に抵抗して戦いを挑んだ勢力がソ連軍撤退完了後に国際テロ組織アルカイダに合流していき、二〇〇一年の米中枢同時テロに至る経緯をたどった。パキスタンは国際テロとの戦いで、重要な役割を果たしてきている。テロや極右活動に個別に対処するのと同時に、パレスチナ問題やカシミール問題といった根本的な原因を解決することが必要だ。

カシミール問題

カシミール問題は、インドとパキスタンが何度か戦火を交えたことでも明らかなように、南アジアにおける緊張の根幹をなす長年の問題である。だが、パキスタンはこの二年間、インドとの和平プロセスを進めており、この地域の雰囲気は改善された。パキスタン、インドおよびカシミールの人々が受け入れられる解決方法を見つけることは可能だ。三者の代表が同じ交渉のテーブルについて、話し合えるようにすべき。現状維持は何の解決にもならない。

核問題

パキスタンが核保有国になったのは、隣国のインドが一九七四年に核実験を行ったことに対抗してのことにすぎない。一九九八年の核実験も、インドが行ったからやむを得ず追随した結果だ。現在、パキスタンは責任ある核保有国で、核不拡散と自国の核兵器の厳格な管理を誓っている。インドに対しても、安全保障関連の信頼醸成措置の実施に加え、戦略的な観点から抑制的な姿勢を取っている。

アジアの中のパキスタン

パキスタンは、南アジア、中央アジア、中東の結節点に位置している。この地の利を生かせば、通信やエネルギー関連を中心とした経済活動の拠点(ハブ)となりうる。また、パキスタンには南アジア協力連合(SAARC)などを通じて、南アジア地域内外の国々との経済統合を促進していく役割もある。東アジアや東南アジアと多面的な関係を構築していきたい。南アジアの将来は、アジアの平和と繁栄にかかっている。

中国によるグワダル港湾建設

中国の援助を受けてパキスタン南西部、イラン国境近くのグワダルにバースを三つ備えた港湾を建設しているが、あと半年で第一期工事が完了する。ここは石油や天然ガスを輸送するシーレーン(海上交通路)の要所。商業港として建設しており、軍事目的に使用することはない。中東などからの観光客を誘致することも計画している。

以 上