2005年 8月29日 |
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『米国民主党−2008年政権奪回への課題−』出版記念企画
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アメリカでは既に2006年の中間選挙、2008年の大統領選挙に向けた動きが水面下で始まっている。米国政治における保守派の台頭を受けて、米国民主党はいかに戦略を練り直していくのか、民主党が抱える問題をスコープとして、アメリカ政治の今後についてパネルディスカッションを行った。 中山俊宏(序論)今回のパネルディスカッションは、民主党が08年の大統領選に向けてどのように戦略を練り直していくのかに的を絞って日本国際問題研究所(JIIA)が行った研究プロジェクトの成果である『米国民主党−2008年政権奪回への課題』という書物の出版を記念してのもの。これは、03年に『G.W.ブッシュ政権とアメリカの保守勢力−共和党の分析』という共和党に焦点を当てた書物として結実した研究プロジェクトに次ぐ第2弾。JIIAは最近、第3弾のプロジェクトを立ち上げ、米外交の思想潮流を研究しているところである。 久保文明(民主党概論)民主党はニューディール政策以降、弱者の政党という性格があったが、現在はエリートの政党とみられがちだ。これは民主党にとって深刻な悩みとなっている。 党内には路線の違いがある。咋年の大統領選敗北の原因をどう見るかにも関係するが、穏健派は党のあり方を根本的に変えるべきとの姿勢であるのに対し、リベラル派は今のままでいいという立場。穏健派は前回の大統領選での「メッセージ」がまずかったとし、減税を唱えるなどして政策面を変えていくべきだと考える。一方、リベラル派は「メガフォン」が弱かっただけで、もっと人を動員するとか、資金を集めれば次回以降は勝てると見ている。 穏健派は今後、安全保障政策でより強硬なテロ対策を打ち出したり、党内の反戦派と訣別したりする必要があると主張する。しかし、イラク情勢が悪化しているので、このままだと来年の中間選挙や08年の大統領選では反戦路線が強まりそうだ。これで勝てるかどうかはわからない。民主党にとっての真の危険は、08年に共和党がブッシュに批判的な穏健派を候補に出してきたときに勝てるのかということ。党の変革を自分たちがやれないうちに向こうが変わってしまったらどうするのか。 砂田一郎(民主党リベラル派)今日、リベラル派は民主党内の3分の1程度にすぎず、非主流の少数派だ。だが、米国社会の良質な部分を代表しており、共和党による保守政治の攻勢を民主党がはね返すのに欠かせない「ばね」の役割を果たすことができるはず。 昨年の大統領選後、若い民主党支持者が新しいリベラル派として台頭してきた。インターネット世代で、反イラク戦争、反ブッシュだが、伝統的なリベラル派のイデオロギーにはこだわらない人々だ。民主党の大統領候補指名獲得レースにも参戦したハワード・ディーンの支持層の運動が発展し、8月のオハイオ州における下院補欠選挙で民主党が擁立したイラク復員兵の候補の善戦を後押しした。 他方、イラク戦争と国防のあり方をめぐるリベラル派と中道派の対立は続いている。ディーンが党全国委員会委員長に就任したが、若者からの支持を広げているというプラスの側面があるものの、激しいブッシュ批判が中道派を遠ざけているのでは、とマイナス面も指摘されている。 吉原欽一(民主党のシンクタンク)リベラル系グラスルーツ活動の拠点の一つであるアメリカ進歩センター(CAP)は、クリントン政権で大統領主席補佐官も務めたジョン・ポデスタが03年に設立した。これは1994年の中間選挙で民主党が大敗北を喫して連邦議会で少数党の座に転落し、02年の選挙でも敗北して、共和党に大統領、上院、下院のすべてを支配されるに至り、ヒラリー・クリントン上院議員がグラスルーツ活動の重要性を指摘したことを受けたもの。民主党再建のためには保守系のヘリテージ財団のようなものが必要との考えに立ち、リベラル系団体などと連携した結果だった。 民主党の再建にどれだけ貢献できるかは、今後CAPがいかに「アイデア」を提示できるかにかかっている。民主党にはアイデアやメッセージがなかったという批判は支持団体からもある。「アイデア」が民主党再建のためのキーワードになるのではないか。 以 上 |
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以 上 |