ベルギーと日本は経済、文化、政治の分野で緊密で友好的な関係を有している。国際政治のレベルでも、ベルギーと日本との緊密な関係は、この夏の日本が国連安保理の常任理事国への運動に対してベルギーが支持したことにも現れている。2001年12月、ベルギーがEU議長国であった際に、「日・EU行動計画(EU-Japan Action Plan)」が合意され、日本とEUの間の関係は飛躍的に緊密化した。我々はいまや緊密で戦略立てられた定期会合のネットワークを作り上げている。そして、政治家同士の対話だけでなく、知的交流や市民交流でも今後さらに交流を深める必要がある。
ベルギーは、欧州連合の拡大と深化を常に支持してきた。ゲルマン文明と古代ローマ分明の交差点に位置し、1950年代における欧州共同体の揺籃の地であるベルギーは、欧州連合のさらなる発展に責任があると考えている。
フランスが国民投票で憲法条約を拒否した5月29日以降、欧州統合の目標そのものが拒否されていると見る論調もある。欧州というプロジェクトを弱めることを防ぐために、あらゆることがなされなければならない。なぜフランスとオランダは「ノー」と言ったのであろうか。そこには複合的な要因があるが、多くの要因は、条約の内容自体を閑却した、EUの問題とは全く関係ないかあっても僅かしか関係のない、国内の政治事情に関係する要因である。つまり自国の政府に対する幻滅の意思表示である。
そして、昨年の拡大と特にトルコを含むさらなる拡大のラウンドは、2ヶ国での否定的な態度のもうひとつの要因になっている。トルコとの加盟交渉は難しい問題であることは間違いない。トルコの加盟に対してオープンであるべきと主張する加盟国もあれば、トルコのように大きく文化も異なる国を受け入れる余地が果たしてEUにあるのか疑問を投げかける加盟国もある。加盟交渉を通じて、トルコは、「アキ・コミュノテール」の導入を進め、国内を改革し、今日の姿とは大きく異なる姿となるであろう。
フランスとオランダがノーと言った他の理由とは何であろうか。一方で、“ヨーロッパ”とは、歳出の削減や環境規制あるいは市場開放など、国民の人気を得にくい政策を実施する際にしばしば便利なスケープゴートとされることがある。他方で、各国政府や地方政府に比べてEUが解決のためのアドバンテージを持っていない問題に対してもEUが問題の解決であると考える人もいる。こうした傾向により、憲法条約を「過剰な(too much)」ヨーロッパに繋がるものとして拒否する人もいれば、EUにあまりにも少ない(too little)権限しか与えられていないとして憲法条約を拒否する人も出てくるということになる。
いま欧州に必要なのはプラグマティズムである。好むと好まざるとに関わらず、EU25ヶ国は同じボートに乗っており、条約批准の問題も一緒に解決していかなければならない。基本に立ち返る時であり、「EUは何によいのか(“What is the EU good for?”)」という根本的な問いに立ち戻る時である。EUは手段でありそれ自体が目的ではないのである。加盟国が主権の一部をプールすることによって、EUは各国単位では成しえない如何なることをEUレベルで達成できるのであろうか。
統合のプロジェクトにおける自信を立て直さなければならない。まず2007年からの長期予算について成功裏に合意に達することが重要であり、新しい加盟国を考慮に入れた予算の新しい枠組みが重要である。経済・通貨の分野では、安定成長協定のより改良されたルールを作り、環境政策の分野では気候変動に取り組むとともに産業廃棄物取引の問題にも取り組まなければならない。司法・内務の点では、亡命に関する共通の制度やビザに関する調和の取れた政策が必要である。
そして外交・防衛政策については、戦闘群(battle group)や欧州防衛庁の機能を強化し、軍事と文民を取り混ぜた即応能力をさらに高め、EUの外交政策を強化するための「コアグループ」を作らなければならない。ソマリアやコンゴの事例のように、率先して危険を冒し努力する加盟国の自発性を積極的に活用していく必要がある。EUのコアグループは、外交・安全保障上級代表、欧州委員会、議長国、そして加盟国の中で特定の対外問題でより一層の外交的努力を払う能力と意思のあるグループによって構成されることになろう。こうした意思と能力によるコアグループの存在は、EUの対外政策の幅を大きく広げることになるだろう。
いまや大胆なイニシアチブを取る時である。欧州委員会がリードを取らなければならないし、加盟国も欧州の自信を取り戻すためにそれを支えていかなければならない。短期的に痛みを伴っても長期的な共通の進歩のために戦うことのできるリーダーとしての加盟国が必要であり、長期的な共通の進歩とは、さしあたりまず今後のEUに不可欠であると全ての加盟国政府が認めた憲法条約が生き残ることである。ベルギーは、いかなる場合においても統合のプロジェクトを軌道に戻すために積極的な役割を果たす用意がある。
以 上
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