JIIAフォーラム講演要旨

2006年 3月 1日
都内ホテル・オークラ

マヌーチェフル・モッタキ
イラン・イスラム共和国外務大臣
「日イラン関係と今日のイラン外交」

駐日大使として滞在後、6年を経て再び日本を訪れたが、変わらぬ友好的な雰囲気にあふれており、大変感謝している。同じアジアに属し、文化的にも近いイランと日本は同じルーツを共有しているともいえる。イランは日本にとって第3位の石油供給国で、日本の石油輸入量の約15%はイランからの石油で占められている。日本が持続可能なエネルギー政策を掲げているのはきわめて重要であり、日本によるアザデガン油田開発はその政策実現の一環であると同時に、親密な日イ関係を象徴するものでもある。

この親密な日イ関係が、第三者の干渉によって損われるようなことは避けなければならない。ビルを建設するだけでなく、そのビルを維持していくことが大変であるように、これまで築いてきた日イ関係を大切に維持していくことを心がけていかなければならないと思う。残念なことに、日イ関係は歴史があるにもかかわらず、特に近年は、双方ともに相手国についての本当の意味での専門家を多く輩出しているとはいえない。専門家養成のために、例えば、奨学金でイランの若い世代に日本語教育を奨励してはどうだろうか。

イランは革命後、特に西側から非難めいた声を多く浴びせられてきたが、実際には選挙で選出された各政権により様々な変化がもたらされてきた。昨年、新政権が誕生したが、20年長期開発計画と4〜5年を対象とした中期計画に基づいた国内経済政策はエリート層のためではなく、庶民を第一に考えて打ち出されたものである。西側諸国の発する非難はダブルスタンダードの政治的根拠によるものであり、イランの遂げてきた進歩を見ようとはしていない。こうした状況では、イランも西側への信頼に基づいた政策をとることはできないのである。

今日、イラン人から問題提起する時が来ている―――我々は正義に基づく平和、繁栄を求めている。しかし、近年の核に関する対イラン問題の中心に、正義は存在しているのかと。中東は30年以上前から非核地帯の道を歩んできていることを、何故、直視しないのかと。イランは国際社会の一員として平和に貢献するべく、1974年にNPT(核不拡散条約)に加盟しており、IAEA(国際原子力機関)の査察も受け入れ、誠実に協力してきた。ならば、イランはNPT加盟国としての権利を享受することもできるはずだ。NPT第4条は原子力平和利用の権利をすべての締約国の奪いえない権利として認めている。日本がこの権利を享受して原子力平和利用を行っているように、イランにもこの権利が認められていいはずである。義務と権利は締約国に平等に付与されなければならない。しかし、ヨーロッパの報告書はイランのコミットメントについてのみ言及し、イランの権利については一言も触れていない。

現在、イランの核問題をめぐってロシアとの協議が行われているが、重要項目は2点、すなわち、ウラン濃縮実施の場所、及び、ウラン濃縮に関する期間である。イラン側は、ロシア国内でウラン濃縮が実施される期間、すなわち、イラン国内でのウラン濃縮凍結期間はなるべく短くしたいと希望しており、特にその点において、まだ交渉が必要である。イラン側は柔軟な態度で交渉に臨んでおり、協議を成功させるのは外交手腕次第である。

対イラク政策については、協調による集団的アプローチが大切である。イランはイラクの統一と国の保全を支持している。イラク問題については、テロの継続、及び、イラク占領の継続という2点が重要観点として挙げられるが、この2点はリンクしており、今後もテロが続くかどうかはイラク占領の状態によるだろう。アフガニスタンについても、我々は同様の見通しを持っている。パレスチナ問題に言及すれば、国連及び欧米諸国はパレスチナの新政権にどのように対処するか当惑しているようであるが、イランとしては条件付きのアプローチは成功しないと考えている。イランはこれまでパレスチナに対して精神的支援を送ってきたが、今後、OIC(イスラム諸国会議機構)として、新ハマス政権を支持するべきという立場から人道的支援を行うことを協議している。

以 上