JIIAフォーラム講演要旨

2006年 3月 8日
都内ホテル・オークラ

イルハム・アリエフ
アゼルバイジャン共和国大統領
「現代世界におけるアゼルバイジャン」

アゼルバイジャンは独立国家としての歴史は浅いが、1991年以降、大変充実した歩みを進めてきた。内紛やテロ等が頻発し、情勢不安定な時期もあったが、政治・経済改革の推進により国内情勢は徐々に安定していった。特に1996年以降、今日に至るまで、アゼルバイジャン経済は連続してプラス成長を続け、平均10%の年間経済成長率を達成している。特に昨年は経済成長率26%という高成長を遂げた。これらは計画的な経済開発のもたらした結果であり、現在は、経済開発のみならず社会開発にも重点を置いた改革を続行中である。

1994年から展開してきた石油戦略は大きな成果をあげており、原油輸出に加えて外国からの直接投資も順調に増加している。石油戦略には自然資源の管理、石油パイプラインのビジネス展開、石油・ガス輸出路の確保等の要素が含まれ、経済、エネルギー、政治という観点から政策を打ち出している。どのようにミスをなくし、産油国として成功を収めていくかを考えながら、戦略を進めている。

経済状況はこのように順調であるが、政治状況は必ずしもそうとはいえない。紛争や敵対心が国内に存在しているからだ。ナゴルノ・カラバフ自治州に関する紛争は20年近く続いているが、いまだ未解決であるのは大変遺憾である。ナゴルノ・カラバフはアゼルバイジャン領土に属し、アルメニアが今も我々の国土の20%を占領している状態は許されるものではない。この紛争で約100万人ものアゼルバイジャン人難民が発生しているのも深刻な問題である。我々は国際法に則った平和的な解決を望んでおり、OSCE(欧州安全保障協力会議)が設立したフランス、ロシア、米国によるミンスク・グループによる和平に向けた調停を受け入れている。

アゼルバイジャンは分離主義者によって19世紀から国土を分割されてきた。歴史的にアゼルバイジャンを振り返れば、どこがアゼルバイジャンの領土であるかは正義をもって認められるはずである。例えばハンケンディという都市があるが、現在、アルメニアが別名をつけて占領下においている。この別名はアルメニア人ボルシェビキの名を取ってつけられたもので、我々アゼルバイジャン人にはなんら意味を持たない。しかし歴史的にみれば、ここはアゼルバイジャン固有の土地であり、アルメニアには決して属していないのだ。アゼルバイジャンの統一は国連によって承認されているのであるから、アゼルバイジャンの領土統一は完全に達成されなければならない。民族自決の権利は国際法で認められた権利であるが、それは民族的マイノリティが国土を分離してもいいということを意味するわけではない。アゼルバイジャンの領土はアゼルバイジャンの領土であり、その統一は交渉で妥協できるような問題ではない。領土については交渉せず。これが我々の立場である。しかし、今後5年も10年もなんの解決も見ないままにこの問題を放置することは、もはやできない。我々はあくまでも平和的解決を求めているが、それでどうしても解決がつかないのであれば、今後、新たな対策を練る必要があるだろう。

こうしたアゼルバイジャン領土内の問題を除き、近隣諸国との関係はいたって良好である。地域社会とは協力の精神、友好の精神を培うことが我々の目指すところであり、地域社会において対抗心や競争心を生むことは全く望んでいない。そのためにも我々は近隣諸国に対しては内政不干渉の立場を取ることで、地域社会の安定や安全に貢献してきている。アゼルバイジャンは開かれた国家を形成し、国際社会や地域社会の繁栄に積極的に取り組んでいる。

国内の課題としては、全体主義社会から民主主義社会への移行が挙げられる。旧ソ連の一部であった頃とは政治的には全く違った国家となっているわけで、成熟した民主主義社会を目指す中で、貧困の解消、失業率の改善等により国民の生活水準が向上するような社会開発計画を実施していくことが重要である。それには経済の好況を維持していくことが必要であるが、現在、多国籍企業コンソーシアムによるカスピ海沖合の油田、ガス田開発の巨額プロジェクトが動いており、これらの天然資源を国際市場に輸出することができる日も近いであろう。天然資源のアジア・欧州間の輸出路整備も今後さらに重要な事業となっていくはずである。

日本との協力関係は、特にここ10年あまりで、政治的にも経済的にも大変深まっている。アゼルバイジャンに進出している日本企業及びそこで働く人々は、アゼルバイジャン社会にしっかりと融合している。アゼルバイジャンは今後、国際社会、地域社会でより重要な役割を担っていきたいと考えており、その為にも日本との関係のさらなる発展を願っている。

以 上