JIIAフォーラム講演要旨

2006年4月6日
都内ホテル・オークラ
  

モハメド・ビン・サウード・ビン・ハーリド殿下
サウジアラビア王国・情報研究センター所長

「サウジアラビア外交と日サウジアラビア関係」

サウジアラビアにとって日本は友好国であるとともに、平和、安全保障、中東・アジア地域、イラク、エネルギー等の諸問題において重要な戦略的パートナーである。サウジアラビアは産油国、OPEC参加国として石油の安定的供給に貢献したいと願っており、石油供給について、友好国である日本には最大の配慮を払いたいと考えている。我が国からは現在50名の外交官研修生が日本に派遣され、日本語を学んでいる。文化使節団を派遣し、経済面だけでなく、文化面でも協力関係の促進を図り、文化的対話や研究調査によって両国関係のさらなる発展に役立てたいと望んでいる。

中東ではまずイラク問題があるが、イラクのすべての政党参加による国家建設が進むことを願っている。我が国とは国境を接しており、イラクの平和は我が国にとって極めて重要である。3つに分裂したイラクではなく、ひとつのイラクを望んでいる。イラン問題については、イランと米国の関係が悪化しないことを願っている。中東地域は1991年の湾岸戦争、9.11後のイラク戦争という、米国主導による二つのイラク戦争によって苦しんできた。戦争が起これば海外投資を招聘できず、経済的だけでなく様々な面においても開発が進められない。もう、これ以上の戦争はいらない。

イランの核問題については、中東は非核地帯を形成しており、核は中東にあってはならないというのが我が国の立場だ。それがイランの核であろうとイスラエルの核であろうと同じである。現在のイラクがシーア派主流となり、イランに加えてシーア派の国が湾岸に二つできることについては、穏健なシーア派であることを求めるが、我が国が望むのは地域の安定であり、安定が保てるのであれば、シーア派国であっても問題はない。

パレスチナでハマス政権が誕生したのはパレスチナ人の選択の結果であるのだから、尊重しなければならない。ハマス政権となったからといって、サウジアラビアからのパレスチナへの支援は止めることはない。これはパレスチナ政府への支援ではなく、学校や病院の整備というようなパレスチナの人々への支援であり、支援は世界銀行等の国際機関によってモニターされている。パレスチナ・イスラエル問題については、我々としては、和平のパッケージを示すことしかできない。それを受け入れて和平を結ぶか否かは当事者次第である。

サウジアラビアがメンバー国であるGCC (Gulf Cooperation Council 湾岸協力会議) とアラブ連盟が連携しているのは良い兆しである。GCCは2010年までに共通通貨と共通関税の導入を目指している。我が国は中国を初めとする世界の経済活動の拡大によって高まる石油需要に対し、産油国として最大限の貢献をするつもりであるが、我が国はあくまで産油国の一つであり、産油国全体が今後、さらに高まるエネルギー・ニーズに長期的にどう応えていくか、協力して検討していくことが重要と考える。

サウジアラビアは民主化を促進しているが、それは外の世界からの圧力によるものではなく、サウジアラビア政府及び国民自身が民主化の必要性を感じているからである。特にサウジアラビアの若い世代は教育水準も高く、市民社会も成熟してきており、民主化に対する意識は高まっている。女性の権利についても拡大が進められており、公務や民間活動においても女性の進出が今後、進むだろう。しかし、サウジアラビアの民主化は米国のやり方ではなく、サウジアラビアのやり方で進められることは強調しておきたい。米国とは以前から強い協力関係にあり、現在もそれには変化はない。問題があるとすれば、メディア受けを狙う米国議会とは多少、摩擦が生じることがあるという程度の話である。今後、日本をはじめ、中国やアジア地域との更なる連携強化を望んでいる。


講演に先立ち、日本国際問題研究所とサウジアラビア情報研究センターとの間で研究交流協定署名式が執り行われた。(左:ムハンマド殿下、右:佐藤当研究所理事長)


以 上