JIIAフォーラム講演要旨

2006年5月18日
日本国際問題研究所
  

マンガラ・サマラウィーラ
スリランカ民主社会主義共和国外務大臣、兼港湾・航空大臣

「テロリズム、平和の創出、民主主義」

スリランカはアジアにおける最も古い民主主義国でありながら、おおよそ30年、テロリズムという悪と戦ってきた。テロに対しては断固とした武力行動で対処すべきであるとか、根底にある原因を探るべきだとか、様々な意見があるが、それら硬軟のアプローチを取り混ぜて対応していくことが最も効果的だというのがスリランカの考えである。

スリランカにおける平和創出の最大の障害であるLTTE(タミル・イーラム解放のトラ)とは過去25年間交渉を続けてきたが、スリランカ政府の努力にもかかわらず、LTTEが民主主義を尊重する姿勢はみられない。しかし、近年は国際社会からスリランカの平和創出に対する支援が集まっている。さらに、半年前に就任したラージャパクサ大統領の高い交渉能力が発揮されることが期待されており、我々は注意深くありながらも楽観的な見通しを持ち始めている。

北・東部の民主化プロセスの障害となっているのは、タミル人の代表は自分達だけであるとするLTTEの主張である。そんな主張は民主主義社会では受け入れられない。タミル人の民主化リーダーのほとんどが、1975年以来、LTTEによって一掃されたという事実をあわせみれば、LTTEの主張は虚しく響くだけである。生き残ったわずかなタミル人民主化リーダーは、常に死の恐怖に怯えながら亡命生活を送っている。
LTTEは抑圧された少数派のために戦う自由の軍団ではないことを、我々は理解する必要がある。2001年の国勢調査によると、54%のタミル人が北・東部以外のシンハラ人が多数を占める地域に住んでおり、多くのタミル人が政府や民間セクターで高い地位に就いている。タミル・シンハラ間の結婚は当たり前のことで、南部に住む多くのタミル人はスリランカの経済開発における重要な役割を担っている。紛争地域の北・東部に住み続けているのはタミル人の最貧困層だけである。

スリランカ和平を試みた最初の外国人リーダーであるインド首相のラジブ・ガンディが1991年に自爆テロで暗殺された。以来、平和創出を手がけた多くのスリランカのリーダーがLTTEによって暗殺されている。昨年8月には私の前任者であるタミル人のカディルガマル外相が暗殺された。しかしながら、スリランカ政府は、こうした武装グループであるLTTEに対してでも交渉による解決を強く求めている。スリランカにおけるパワー・シェアリングのための共通の土台が構築されつつあり、停戦合意の協議が着実に進められている。

しかしながら、LTTEが停戦合意を利用して領海や領空の統治権といった不可侵の権利を主張するのは間違いであるし、テロを行う武装組織を不当に承認することもできない。2002年の停戦合意以降もLTTEは多くの国内法・国際法違反を行ってきている。自爆テロという忌むべき行為も頻発させている。こうしたLTTEからの挑戦により、スリランカ和平が複雑化しているのは事実である。

北・東部の再建と開発は、平和創出プロセスの主要課題の一つである。経済開発の恩恵を受けてこなかった同地域のタミル人が自立していくことは重要である。2005年、政府は8億3千2百万ドルを、北・東部の紛争の影響を受けた地域の開発と津波被害からの復興活動に充てることを決めた。日本政府は2004年の津波被害からの復興に対し、最初に援助を申し出てくれた国のひとつである。日本からの復興資金は、被害地域の住宅、給水設備、病院の建設等に使われている。日本はスリランカにとって最大援助国であり、スリランカのインフラ整備に大きく寄与し、毎年2億5千万ドルを公共投資プログラムに支援し続けてくれている。スリランカ和平に対する日本政府の大きな外交支援にも感謝の意を表したい。

以 上