JIIAフォーラム講演要旨

2006年6月1日
日本国際問題研究所で
  

キャロル・ベラミー前UNICEF事務局長

「UNICEFにおける国際人道支援と
グローバル・リーダーシップ」

30兆ドルの世界経済に対し、6人に2人が一日2ドル以下で暮らしており、その多数は女性と子どもである。我々がなにげなく飲んでいるスターバックスのカフェラテ一杯の値段はこの倍だ。生命は賜物といわれるが、ある人たちにとって生きることは地獄でもあるのだ。安全な水、栄養のある食事、基本的な保健サービス、基礎教育、こうしたBHN(ベーシック・ヒューマン・ニーズ)へのアクセスがないままに生きることを強いられている人々、特に子ども達の存在がある。現在においても、1千万人の子どもが治療可能な病気で命を落としている。

こうした状態を生んでいるひとつの主要因はリーダーシップの欠如である。我々は何をすべきかわかっているときも、行動に移そうとする意思をたびたび欠く。リーダーシップとは選択をすることである。どんな選択をするか、どのように資源を分配するのか。国際社会が貧困のサイクルを破るコミットメントが必要である。貧困のサイクルの主要因であるHIV/AIDS、紛争、天然資源の不適正な分配に目を向け、貧困と人間の安全保障について認識することが、正しいリーダーシップを生む第一歩だ。日本は人間の安全保障というコンセプトを提示するのに、大きな役割を果たしてきている。

子どもの生活状況改善のためのグローバル・リーダーシップについて振り返ると、1990年に子供のための世界サミットが開催され、2000年のミレニアム・サミットでは子どもの生活状況改善が主要課題の一つとして議論された。2002年には国連子ども特別総会が開かれ、HIV/AIDSや暴力・搾取からの児童の保護等、主要課題について報告されるとともに、子どもが子どもらしい生活を送ることができる環境を作るための政治的コミットメントが確認された。

特に女子と女性の保護は極めて重要である。子どもの保護には、まず母親の保護が必要である。女性が守られ、女性が強くならなければ家庭も守られることがないからだ。家庭が守られなければ子どもも育たない。レイプ、性的搾取、HIV/AIDS―――これらの最大の被害者は女性であり、女子である。こうした犠牲者が声を上げることすら恐れてできない環境が、アフリカに、そしてアジアにも存在している。コンゴ民主主義共和国では女性はシステマティックなレイプの危険にさらされ、アフガニスタンでは女子が通う学校が焼き討ちにあうといった事件が頻発している。そして、保護と同時に、女子と女性の権利の促進も行われなければならない。女子は男子よりも教育を受ける機会が少ないのは途上国ではよくある現実であるが、女子が教育を受けることによって出生率が下がり、家庭の健康状態が向上するという援助効果は、広く認知されている。

現在の世界の子どもを脅かす最大の脅威は、戦争とAIDSだ。戦争は短期的にも長期的にもなんの恩恵ももたらさない。AIDS孤児や感染児の増加は深刻である。さらにAIDSは特にアフリカにおいて、単に人が命を落とすという問題だけでなく、犠牲者があまりに多く、国にとって欠かせない教師や衛生サービス従事者といった人的資源がAIDSによって失われ、国家の存続までもが危うくなっているというレベルの危機に達している。まさしく人間の安全保障と国家の安全保障が結びつく問題であり、人間の安全保障は単に戦争がない状態を意味するだけではないということを、この問題から理解することができるだろう。

(以上は民間のユニセフ支援者としての見解であり、ユニセフの立場から述べたものではない)

以 上