JIIAフォーラム講演要旨

2006年6月6日
於:都内ホテル・オークラ
  

スパンタ・アフガニスタン外務大臣

「アフガニスタン復興と平和構築の進展と課題」

アフガニスタンは最近4年半の間に大きな変化を経験した。タリバン政権下のアフガニスタンを象徴する出来事が、2001年3月の仏像破壊だとするならば、ポスト・タリバンの新生アフガニスタンを象徴する一つの事実として、就学児童数の著しい増加をまず指摘したい。今やその数は700万にまで達している。

選挙により選出された大統領と議会から成る民主的な国家の枠組みが、アフガニスタンの近代史上初めて創設された。市民社会や政府から独立したマスメディアも成長してきており、経済もまた17%という高成長率を記録してきた。かつて破綻国家とみなされたアフガニスタンが国際社会の確固たる一員となったことは、本年1月にロンドンで開催された復興支援に関する国際会議に70カ国以上の国や多数の国際機関・NGOが参加した事実に現れているといえよう。

アフガニスタンの対外関係も大きな変革を遂げてきた。これまで採ってきた国際社会との協調を重視する政策無くして現在のアフガニスタンは無いと言ってもよかろう。特に近隣諸国との関係が重要である。アフガニスタン政府は、長年の戦争と流血の歴史によってバランスが失われた隣国との関係の在りようを変える決意である。対等なパートナーシップを構築すると同時に、地域協力の触媒になりたいと希望している。

相互依存がますます深化する中、地域協力が緊張緩和と経済競争力強化の最善の方法であろう。欧州連合の経験を我々の地域で再現するのは大変な作業であろうが、持続したコミットメントと努力をもってすれば不可能なことではないと考える。アフガニスタンと周辺諸国の善隣友好、相互不可侵などを再確認した2002年12月のカブール宣言は、その一つのステップであった。他のイスラム諸国との関係強化も外交政策のプライオリティと位置づけている。

米国との戦略的パートナーシップが戦争の遺産を克服する上で鍵になる。そして欧州連合、日本、インドとの関係も戦略的に重要だと認識している。日本はアフガニスタンにとって、シルクロードを介した長い交流の歴史を持つ特別な国であり、両国は20世紀を通じて友好的な関係を維持してきた。2002年1月に東京で復興支援国際会議を主催し、総額約11億ドルを拠出するなど、日本はアフガニスタン復興に積極的に協力してきた。さらに、元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)や非合法武装グループ解除(DIAG)、幹線道路修復など重要なプロジェクトに関与してきた。日本との関係の拡大・強化が、私の新外相としてのプライオリティの一つであることを強調しておきたい。

アフガニスタンは、中央アジア、南アジア、中東および東アジアの間の懸け橋になるのみならず、イスラム世界と民主主義諸国との間の懸け橋になるよう願っている。イスラム国家であることと民主国家であることは矛盾しない。イスラムと民主主義の価値が有機的に結びつき、複数のコミュニティーの平和的共存が実現されている例は世界各地に多々ある。

途上国と先進国の関係もまたアフガニスタンにとって重要な問題である。グロバールな課題の解決には相互のパートナーシップが不可欠であると考える。とりわけ、国際社会は環境保全と社会的正義に十分配慮しながら、持続可能な開発を促進しなければならない。

アフガニスタンは目下大変革の最中にある。繁栄と自由、民主主義の伸長を阻もうとする過去の勢力と、法の支配、人権尊重、平和共存に立脚した新生アフガニスタンの建設を目指す現在の勢力との間で争いが続いている。

アフガニスタンの最大の懸案事項はテロリズムである。我が国で活動するテロリスト達は国外から継続的な支援を受けていると確信している。加えて、麻薬の生産と密売も脅威である。国際社会の支援の下、農民に対する代替生計支援や隣国との協力など、多面的な麻薬対策を講じる必要があろう。さらに、汚職、武器の不法流通、失業、経済格差なども不安定化要因である。日本を含む国際社会の長期的な支援を受けながら、我が国がこれらの問題に立ち向かい、自由で民主的な繁栄した国家となるよう願っている。

以 上