JIIAフォーラム講演要旨

2006年10月18日
於:日本国際問題研究所

丹羽敏之 ユニセフ事務局次長

「国連における日本の顔−邦人職員増加への提言−」

 私の国連におけるキャリアは、南米にあるUNDPの小さな現地事務所で70年代初頭に始まったが、事務所のナンバー2として責任ある仕事を任されたうえ、仕事の手ほどきをしてくれる親切な上司に恵まれたこともあり、とても幸運なスタートだったと思う。当時は国連機関の日本人職員も少なく、自分で道を切り開く意気込みと自助努力の重要性を痛感していた。何よりもまず、それを後進へのアドバイスとしたい。その一方で、国連でのキャリアを積んでいく中で、外務省のサポートの必要性を強く認識するようになったのも事実である。

 その後外務省の地道な努力が実り、邦人国連職員の数は著しく増加したが、国際社会における日本の役割からするとまだ十分とはいえない。ODAが減少傾向にあることも影響して、職員数が頭打ちになってきた感もあり、さらに増加させるためには何らかの措置が必要であると考える。

 他国と比較して日本では、政府、国連機関、及び民間企業の間で、人材の流動性が少ないように思われる。政府機関から国際機関への出向は、出向者自身のその後のキャリア形成に必ずしもプラスになっていない場合が多々ある。邦人国連職員を増やすためには、政府機関、民間企業、NGOなど国連機関に人材を送り出す側が、国連勤務を後押しするようなメリットシステムを導入する必要があろう。また一方で、国連勤務経験者に対する日本国内の受け皿が不足しており、そうした人材を再教育する仕組みを是非創っていただきたい。加えて、女性がプロフェッショナルとして活躍できるような環境作りが国内でさらに進むことが、国際機関における女性の邦人職員の増加につながるだろう。

 日本人を国連機関に送り込む際、候補者が国連で幹部として活躍できる将来性があるかどうか、事前の勤務評価を徹底すべきだと思う。その上で、優秀な人材がいれば、時には強引に送り込む姿勢が日本政府にもっとあってもよいのではなかろうか。若い日本人を国連機関に派遣する枠組みとして、JPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)制度があるが、現行の2年の派遣期間を3年に延ばすなどして拡充するのも一案であろう。また、国際機関に対する主要なドーナーとしての地位を生かしつつ、幹部あるいは中堅レベルのポストに日本人を送り込む努力が引き続き期待される。

 そのうえ、国際公務員の雇用条件の改善が必要であると考える。私が国連職員になった頃と比べれば、円の価値が上がったため、国際公務員という仕事は少なくとも給与面でそれほど魅力的なものでなくなってしまっている。国連での勤務経験が帰国した際にメリットとなるような、年金制度やその他生活面での厚遇措置を講じてもよいかもしれない。

 特に開発・人道援助分野における日本の事情やシステムに精通した方や、MBA保持者など、様々な専門的バックグラウンドを持った日本人が国連におけるキャリアに関心を持つよう希望している。日本人としてのしっかりとした自覚や人間関係における日本的美徳、そして堂々と自己主張を出来る能力を兼ね備えた方に積極的に国連職員を目指していただきたい。

以 上