私にとって8回目となる今回の訪日は、日本とヨルダンの両国にとって重要な節目の時期にあたる。日本は、第二次世界大戦後の数十年間で経済大国および平和国家としての地位を確立し、現在は、安倍新首相のもとで、自由社会を基盤としつつ日本の伝統に根ざした「美しい国」造りを目指している。
こうした目的は、我が国ヨルダンも共有する。日本からは目的達成のためにすでに様々な支援をいただいている。日本の開発援助は、インフラ、貿易、保健医療、教育といった様々な分野の改善に貢献し、職業訓練や財政支援でも重要な役割を果たしている。
我々は、日本の揺るぎない支援に感謝している。世界でリーダーシップを発揮する日本の行動に感謝と敬意を表したい。日本の支援は、政治・経済・社会の広範囲にわたる改革を後押しし、我が国が世界経済に参加する助けとなっている。
現在、ヨルダンは年率6.5%以上の経済成長を遂げ、市場へのアクセスも拡大、中東経済において中心的な役割を担いつつある。世界での成功に必要な知識、技能、科学技術へのアクセスも獲得し、所得水準も向上した。域内の経済協力でも主導的な役割を果たし、昨年9月には、第一回中低所得国サミットを主催した。この分野でも日本の支援を頼みとしている。
ヨルダンは、政治、社会改革でも地域のリーダ的役割を担いつつある。昨年には今後10年間の改革優先事項を定めたナショナル・アジェンダを発表し、日々、目標達成のために邁進している。今月初めには汚職取締法も発効、今後数ヶ月のうちに、政治の多様性、情報アクセスの拡大、メディアの自由化を促す法案も成立する予定だ。教育の分野でも、中東や他の地域の模範となる技術導入を進めている。
日本と同様、ヨルダンは成功の成果を地域の平和、民主化、安定のために共有したいと願っている。他者への責任は、我々の宗教の中心的な教えであり、イスラム教は博愛の精神を重んじ、過激主義を糾弾する。これが大多数を占める穏健派ムスリムの見解だ。私はこれが世界、特に中東の将来にとって重要な鍵となると信じている。
我々の地域は深刻な危機に直面している。人命被害、武器の拡散等の問題が域内の覇権国家と過激派の干渉を招き、人口問題がこうした傾向に拍車をかけている。中東では、人口の半数以上が18歳以下の若者で占められている。若者には過激主義と暴力に代わる雇用の機会が保証されるべきだが、このためには2010年までに5000万、2020年までに2億の新規雇用を生み出さねばならない。
我々はこうした課題にともに対処していく必要がある。日本は中東で、経済パートナーとして、発展のモデルおよび支援者として、重要な役割を果たしてきた。昨年の夏、小泉首相と私は、「平和と繁栄のための回廊」という、中東平和構想における日本の革新的なアイディアについて議論した。これはヨルダン、パレスチナ、イスラエル間での経済協力を謳った、持続可能な平和の原則に基づいたイニシアティブだ。この点において、日本は経済のみならず政治的にも重要な役割を果たしていることになる。
中東問題の核心は、パレスチナ・イスラエル紛争だ。まず必要なのは同紛争の公平な解決であり、これがより大きな課題であるアラブ・イスラエル間の和平達成のきかっけとなるだろう。すでに基盤はある。2002年のアラブ和平構想が、アラブ諸国とイスラエルの相互の安全保障、イスラエルが1967年に占領したすべてのアラブの領土からの撤退、そしてパレスチナ独立国家の建設といった、双方が歩み寄る道筋を提示している。ロードマップを最初から実現するのは、非常に時間がかかる。二国家方式による解決を実現するためには、行程のうち、いくつかを省略したり、複数の課題を同時に実施する必要がある。
第二に、平和を確実なものにすることが重要だ。そのためには安全保障を強力な経済成長とリンクさせる必要がある。実現可能なパレスチナ国家とは、安定した経済発展を遂げられるものでなければならない。人々と政府、財界の協力関係を構築し、目に見える成果をもたらす必要がある。
日本の提案を実行に移す時だ。今日、安倍首相にお会いした際にもこの件について意見を交わした。我々は、イラク情勢についての懸念も共有している。政治・経済・外交手段を強化し、イラクの安定、和解促進、政治プロセスにおける自信の回復といった持続的な平和を後押しする必要がある。すべてのイラク人が権利と安全を保障される新しいイラクを誕生させるためには、スンニ派を含む主要3派の関与が不可欠だ。
統一と主権確保に努めるレバノンの人々に対しても、手を差し伸べる必要がある。そして、核兵器拡散問題も、日本・ヨルダン両国があらゆる外交手段を駆使して対処せねばならない地球規模の課題だ。
日本の歴史は、長く破壊的な紛争の後でも平和と繁栄が可能であるとの重要なメッセージを伝えている。日本の責任と英知は、中東の繁栄と進歩に大きな貢献をしてきた。そして今日、日本のリーダーシップは単に歓迎されているだけでなく、必要不可欠なものとなっている。パートナーとして、友人として、我々は今日の危機を打開する方策を見出し、平和が約束された未来に向けて前進していこう。
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