今日は、インドネシアの政治経済情勢についてお話したい。まず、インドネシアの経済情勢についてであるが、強調したいのは、インドネシア経済は、一時期の困難を脱し、最近継続的に上げ潮基調にあるということである。インドネシア経済については、成長率が2000年以降概ね5%程度で漸増し、2010年には7%にまで伸びると予測されているほか、財政赤字がGDPの1%程度に収まっている一方で、財政支出は堅調に推移している。加えて、インフレ率は昨年の17%から最近は7%にまで低下するなど、好ましい状況が続いている。これらは、主に財政支出の削減によって説明されるだろう。また、GDPに占める債務の比率も、2001年は81%だったのが2005年には47%に、さらに2006年には39%にまで低下した。通貨ルピアも安定している。こうしたことの結果として、インドネシアは70億ドルに上るIMFの負債を2006年に4年前倒しで返済した。
このように、インドネシア経済の現状は、総じて軌道に乗っていると評価できる。確かに、投資の遅れ、貧困層の増大、失業者対策、税制問題のほか、労働者によるストライキ、インフラの未整備、原油価格の不安定による社会経済への影響など、少なからぬ問題も現存する。しかし、それでもなお、インドネシア経済の見通しは暗くない。2007年、恐らくインドネシア経済は、経済規模はやや縮小するものの個人消費は増大し、経済成長率は6.0〜6.5%、インフレ率は6.0〜7.0%となるだろう。また、失業者や貧困者も減少するだろう。こうした中、現在インドネシアは、投資環境改善、インフラ整備、財政改革、の三つを柱とする経済政策を推進している。これらは、投資に関する法律の整備など様々な内容を含みものである。
次に、インドネシアの政治情勢についてである。インドネシアは、世界最有力の民主主義国家の一角とならんことを目指している。インドネシアの指導者は、スカルノ(在任期間1945.8〜1968.3)、スハルト(同1968.3〜1998.5)、ハビビ(同1998.5〜1999.10)、ワヒド(同1999.10〜2001.7)、メガワティ(同2001.7〜2004.10)、ユドヨノ(同2004.10〜現在)と推移してきた。この間、多くの改革が行われたが、インドネシアの政治社会情勢は、とりわけ1998年の改革以降、うまく機能している。もっとも、経済情勢におけると同様、取り組むべき問題は少なからず残されている。大統領や議会制度の更なる改革、政治的少数派への配慮、汚職、テロ、環境、健康といった問題への対策などである。これらは、不断に取り組むべき課題である。
さて、インドネシアの経済・政治情勢は概要以上の通りであるが、最後に、日本とインドネシアの関係についてお話したい。ご承知の通り、日本は、インドネシアにとっての主要な経済協力相手かる政治的同盟者である。この二国間の良好で相互的利益的な関係は、今も不変である。日本の実業界は、インドと中国により大きな関心を向ける一方で、インドネシアへの関心をやや失いつつあるようにも見受けられるが、それでも、二国間の貿易額は相当に大きい。2006年、インドネシアの日本への輸出総額は239億ドル、インドネシアの日本からの輸入総額は73億ドルに達している。インドネシアと日本との経済関係では、とりわけインドネシアのODAの40%が日本からのものであること、また、世界103カ国に及ぶインドネシアへの投資国の中で日本がその最大のものであることを、特筆しなければならない。
2005年6月、小泉首相(当時)とユドヨノ大統領が会談し、両者は、5分野118事業から成る「日本インドネシア戦略投資行動計画」(SIAP)を策定した。また、2006年11月には、ユドヨノ大統領は日本を訪問し、「平和で繁栄入した将来のための戦略的パートナーシップ」に署名した。両国の関係は、あらゆるレベルで発展しているのである。今年2008年は、インドネシアと日本の外交関係樹立50周年という記念すべき年に当たる。両国の相互理解と相互協力がますます深まり、これが東アジアの平和・安定と経済成長に貢献することを祈ってやまない。
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