JIIAフォーラム講演要旨

2007年6月21日
於:都内・ホテルオークラ


カリーム・ハリリ アフガニスタン・イスラム共和国副大統領

「アフガニスタンにおける治安状況」

ポスト・コンフリクト(紛争終結後)の国づくりに取り組むアフガニスタンにとって、第二次世界大戦後目覚しい復興を遂げ、今日の平和と繁栄を手に入れた日本は見習うべき手本である。これまで両国は歴史的・文化的つながりに加え、友好的な外交関係を培ってきており、今後さらに協力関係が発展することを願っている。

タリバーン政権崩壊後のアフガニスタンにおける国家再建プロセスは、新憲法制定、一連の民主的選挙の実施、DDR(元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰)の成功裏の完了、治安組織の創設、医療や教育の改善など、様々な分野で大きな成果を上げてきていることをまず強調しておきたい。だが同時に、克服すべき課題が山積しているのも事実である。

とりわけ、治安の改善および法の支配、社会正義の確立を急がなければならない。なぜならば、これらは民主主義が機能するための基盤を成すからである。麻薬栽培、テロリズムと犯罪、汚職、貧困、違法な武器の取引などの問題も深刻である。昨今タリバーンが国外からの継続的な支援を受けながら復活してきており、こうした問題の解決を困難にしてしまっている。国際社会の支援が諸課題に取り組む上で引き続き必要なのは言うまでもないが、目に見える成果を生み出すためには、アフガニスタン政府と国際社会がより緊密な連携と調整を推し進めなければならない。

アフガニスタンの治安状況は、昨年著しく悪化し復興プロセスの大きな障害になったが、その後改善の兆しが見えつつある。パキスタンの協力が地域の安定にとって重要であること、より具体的に言えば、同国が国境付近に存在するテロリストの拠点を取り締まる必要があることが、国際社会の中でより強く認識されるようになったのは好ましい傾向である。さらに、アフガニスタン国軍および国家警察が増強され、アフガン人自身の治安維持能力は向上している。また国際治安部隊のプレゼンスも同じく強化され、アフガニスタン安定化に対する国際社会のコミットメントが再確認されたことは大変心強い。アフガニスタンの治安組織と国際治安部隊が連携していくことが極めて重要であると考える。

DIAG(非合法武装集団の解体)に関しても、アフガン国民全体の強い支持を得られるようになっている。DIAGの進展が、アフガン国民が切望する武器のない社会の実現に繋がるよう期待している。DDRとDIAGは復興プロセスと治安分野改革の成功にとって鍵であり、日本の積極的な支援は極めて重要な意味を持つ。

アフガニスタンの国家再建は一定の成果を上げてきた一方で、克服すべき課題も未だ多い。地域の安定、ひいては国際平和に多大な影響を及ぼすアフガニスタンの安定に、日本、そして国際社会がさらに強力な支援をしてくれることを希望する。


トム・ケーニッヒス
アフガニスタン問題担当国連事務総長特別代表
兼国連アフガニスタン支援ミッション代表

アフガニスタンの復興と再建の足かせになっているのは、タリバーンの残党勢力やその他の反政府運動、テロリスト、金銭的な見返りを求めて戦闘に加わる者、過激主義に傾倒する者、麻薬ビジネスを維持しようとする者など、統一的なイデオロギーで必ずしもまとまっていない、雑多な諸集団であるということをまず明確にすべきである。

アフガニスタンの抱える問題の解決には、軍事的な対応のみなならず、ガバナンス強化、法の支配の確立、そして開発などを重視しなければならない。またパキスタンとアフガニスタンの国境地域の安定を含めた地域的なアプローチの重要性を指摘しておきたい。タリバーンに対する最終的な勝利は、外国部隊によってではなく、アフガン人自身によってもたらされる必要があり、そのためにもアフガニスタンの国軍や警察の能力強化に努めるべきである。総じて、寛大で効率的なドナーである日本を含む国際社会とアフガン人が、民軍両面において、長期的なコミットメントと視野をもって協力していくことが重要であると考える。

以 上