JIIAフォーラム講演要旨

2007年6月28日
於:都内・ホテルオークラ


ローヒタ・ボーゴラガマ スリランカ外務大臣

「テロリズムと地域経済:スリランカの経験から」

スリランカと日本は、宗教的・文化的伝統に深く根ざした、何世紀もさかのぼる歴史的な関係とともに、民主主義や法の支配の尊重などの価値観も共有している。我々は、戦争の荒廃から立ち直り、経済大国に成長した日本とその国民を大変尊敬している。日本の経験は他のアジア諸国に経済発展への自信を与えてきた。スリランカ経済の規模は比較的小さいが、年間平均成長率6%を維持しており、海外からの投資も盛んである。これらは、タミル・イーラム解放の虎(LTTE)によるテロリズムとの闘いという困難を抱えつつ達成してきた実績である点を強調しておきたい。

目下アジアの地域経済はテロの脅威に晒されている。世界貿易の約3分の1、そして世界の石油供給の半分相当が行き交う海上交通の要所であるマラッカ海峡が、テロの脅威に対して脆弱だという事実は既に広く認識されている。スリランカの例で言えば、LTTEから深刻なテロの挑戦を受けている。LTTEは、他のテロ組織と連携するなどして、不法な資金調達、武器や麻薬の密輸、人身売買を国際的規模で展開すると同時に、船舶のネットワークと海上戦闘能力も保持している。実際のところ、最近欧米諸国において、LTTEの活動家による違法行為が相次いで摘発されている。

現在発生しているテロの多くが国境を越えるテロ・ネットワークにより実行されていることに鑑み、国際社会が一体となってテロ対策に取り組む必要があると考える。また、テロが投資や貿易などの経済活動に与える悪影響を考慮しなければならない。そうした意味で、APECによるテロへの取り組みは、アジア地域における貿易と人の移動の安全確保に資するであろう。日本には、テロ対策における地域協力の推進役としての役割を期待している。日本外務省が国際テロ対策協力を重視していることを歓迎しており、それが日本のみならず、国際社会全体の安全保障に寄与するものであると確信している。

スリランカでは、度重なるテロ事件により無辜の市民を含む多くの犠牲者が出ている。スリランカ政府は、LTTEに暴力を放棄して和平への道を進むように求める。和平プロセスがスリランカの主権と領土の保全を尊重する形で進められるべきであるのは言うまでもない。そして国際社会に対しては、アル・カーイダと同様に、LTTEなど他の危険なテロ組織の活動も注視するよう訴えたい。情報の収集と共有、武器密輸と人身売買のネットワークの壊滅、テロ組織の資金調達能力の無力化などのテロ対策を進める上で、国際的な協力をさらに強化する必要があろう。南アジア地域協力連合(SAARC)の枠組みにおいても、テロ対策における地域協力の必要性がより強く認識されるべきである。前述のように、テロ対策が失敗すれば大きな経済的コストが伴う。テロの撲滅は、その被害を被っている国々だけの問題ではなく、国際社会全体の責務であると考える。

以 上