ウクライナの国際社会における位置づけと、日本とウクライナの二国間協力について話をしたい。ウクライナは1991年に独立して以来、国際法に依拠して外交政策を進めてきた。
EUやロシア、GUAM諸国など、ウクライナは近隣の国々と協力関係を模索してきたが、我々のパートナーはそれらの国々だけではない。民主主義などの価値を共有する世界の国々との間に広くパートナーを求めたい。
我々のゴールは欧州大西洋地域への統合にある。ウクライナはEUに加盟したいと望んでいる。現在はEU加盟までの過渡期であり、ウクライナとEUの間の自由貿易協定の策定や移動の自由の拡大など、加盟に向けて実質的な統合を先行して進めようとしているところである。我々は欧州近隣政策(ENP)の枠組みで行われている協力を超えて、さらに踏み込んだ協力を望んでいる。EUとウクライナの間で「パートナーシップ協力協定」ができており、それをさらに拡充させた「強化された協定(enhanced agreement)」が今年締結される見込みである。こうした協力の推進には、ウクライナがWTO(世界貿易機関)に加盟したことも弾みとなっている。数千人、数万人のウクライナ人が欧州で働いており、ウクライナ政府は彼らの権利を守る必要がある。人的交流の拡大やシェンゲン協定の加盟推進など、欧州大西洋地域との協力を進めたい。またウクライナのNATO加盟については、国内に若干の反対はあるものの、政治指導者たちの間ではMAP(NATO加盟のためのメンバーシップ行動計画)へのウクライナの参加やウクライナのNATO加盟については合意ができている。
日本とウクライナの関係は少しずつだが着実に発展している。文化交流など精神面での交流も進んでいるし、政治的な対話の包括的な枠組みも拡充されてきた。日本が黒海地域にコミットすることを、地域のどの国も歓迎している。ウクライナの海運と鉄道を拡充することで黒海沿岸地域は欧州の輸送ルートと直結することになる。多くの国が恩恵を蒙ることになるであろう。日本とウクライナには、例えば環境問題・気候変動問題などのように協力しうる分野がある。また、どのような協力においても人間が大事であり、お互いの歴史と文化を学ぶことが重要である。日本とウクライナの間には、オーケストラの招聘や、「日本・ウクライナ文化祭」の定期的な開催などの文化交流が行われているが、学生やジャーナリストなどにも範囲を広げて、両国の交流を広げていきたい。また、この場を借りてホロドモール(1930年代のウクライナ大飢饉)の追悼に対しての日本の支援に感謝したい。当時のウクライナの人口の4分の1にあたる1,000万人が亡くなったとされるホロドモールの追悼をウクライナがユネスコに提案した際に、日本が支持してくれたことに対してウクライナは大変感謝している。
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