国連の平和維持活動は世界の各地で安定化のために主要な役割を果たしている。88,000の兵士や警察官、21,000人の文民が展開している。
新しい国連は過去の国連とは違うし、1990年代の国連とも違う。そこには量的な変化だけでなく質的な変化がある。従来の平和維持活動が行っていた停戦遵守や国境管理だけでなく、多くのことを行う必要が出ている。冷戦後、国際安全保障の危機は、国家間の戦争や反植民地運動といったとは異なるものへと変化した。武装した軍隊と一般市民の区別がつけられないものが多くなった。今日の課題は、伝統的なものとは違っている。日本語では「乱」と言うそうだが、今日の安全保障の脅威は、秩序の失われた混乱の紛争で、誰が相手なのかわからない脅威である。したがって単に純粋に軍事的なものではない新しい対応が求められる。経済の復興と安定化や、正統な政府をもう一度打ち立てることなど、平和に移行するためにさまざまな新しいアプローチが必要となっている。
重要なのは、平和維持活動は平和活動の一部であるということである。同じように重要なのは、国連は世界中の安全保障のあらゆる問題に有効ではないということである。国連は平和活動の中核ではあるが、すべての課題に対し国連が普遍的に有効だと考えるのは危険である。様々な分野での国際社会全体によるアプローチが必要である。
アジアと日本の役割についても話したい。アジアはいまやグローバルな責任を持つアクターである。アジア諸国、とりわけ日本は国際的な安全保障システムにいつも重要な貢献を果たしてきた。必ずしも常に平和維持活動に参加してきたというわけではないが、様々な国家間のフォーラムを形成してきた。また、アジアとアフリカの相互作用に期待したい。アフリカは次なるフロンティアであり明るい側面もある。アジアがどういう役割を果たすか、鍵はアフリカである。アフリカをいかにグローバルな成長に乗せるかである。また、日本は平和活動において多大な財政的貢献を果たしている。さらに期待されるところがあるとすれば平和維持活動への人的貢献であろう。広島平和構築人材育成センターの設立はその好例である。
平和維持は平和構築の一部をなすものである。平和維持と平和構築について、昔は順番にやってきた。いまは平和維持を考えると同時に、初めから平和構築から考える必要がある。いまや平和構築は最初の課題である。紛争後の財政的支援をコストと考えてはならない。破綻国家への支援はその国が破綻してしまうよりも安くつくのであり、1つの包括的なものと考えた方がよい。
アジアとりわけ日本は、平和と安全保障に大きな責任を担ってきた。新たな世代の平和維持の人材の育成はその中でも大きな貢献であろう。アジアは平和な世界の良き市民たりうるし、来る変化への対処に貢献することができる。そして国連はそのための主要なフレームワークを提供することができる。我々はあなた方の貢献に感謝しているし、さらなる協力を期待している。
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