多くの国家や国際機関がアフガニスタンを支援しているが、それには多くの理由がある。アフガニスタンでは30年間も内戦が続いており、アフガニスタンの不安定化はテロの温床にもなっている。数百万人が国内外で避難民となっている。国連安保理は、アフガニスタンの国家建設を国際社会のタスクであると決めた。日本も有力なドナーとなっている。NATOを中心とする約50,000人の軍隊が現地に入り、カルザイ政権を援けて治安維持に当たっている。アフガニスタンの政府と国民を支援するのは容易ではない。国際社会の長期的なサポートがいる。
アフガニスタンのリーダーシップは困難な課題に直面している。多様な国民の間でいかに合意を形成するか、様々な部族集団の間でどのように均衡を作り出すか、いかに有効な国家の民生部門や適切な軍隊を創設するか、いかに腐敗をなくすか、いかにタリバン兵やアルカイダなどの武装組織の流入を止めるか、パキスタンを初めとする近隣諸国との関係をいかに強化するか、これらの課題を克服するためにも国際社会の長期的なサポートが重要である。国連加盟国の多くの国が、国力に応じてアフガニスタンの平和への支援を行っている。最も支援しているのはアメリカであるが、イラクもあり過重な負担となっている。イギリスとカナダも比較的大きな貢献をしている。オランダもまた貢献しており、約2000人の軍隊が南部地域に展開している。
アフガニスタン政府は国内の反対勢力とも交渉しなければならないが、同時にパキスタンの不安定化がアフガニスタンにも深刻な影響を及ぼしている。アフガニスタンとの国境にあたるパキスタンの北西部には、ネオ・タリバンと呼ばれる地域もある。いかにパキスタンを支援して国境を超えたテロをやめさせるか、これは難しい課題である。またアフガニスタンの国軍の編成も急務である。現在83,000人を目標に国軍の養成が進められている。
さらに重要なことは、アフガニスタンの警察力の強化である。EUがこの分野で貢献をしている。有効な警察力は国家建設に不可欠である。軍の育成に躊躇するとしても警察の育成なら支援できるという国もあるのではないだろうか。
それから農村地域の状況の改善が必要である。麻薬の栽培が問題となっているが、麻薬問題の解決のためには芥子畑を潰せばいいというものではない。それに代わる作物を育てられるような農業支援を行い、それによって人々が生活できるような基盤整備が必要である。また女性の人権の問題も重要な課題である。
アフガニスタンの国家建設に、国民国家を前提としたOECDモデルは適用できない。アフガニスタンは国民国家ではない。かつてアフガニスタンは多くの部族と緩やかな王朝の下に伝統的な安定を維持して来た。現在そうした伝統的な安定は失われてしまい、もはや以前の伝統社会に回帰することはできないのである。したがって国内の各地域における地方自治体の役割が必要である。
カルザイ政権は厳しい立場にある。この国の国家建設が失敗したとき、問題はアフガニスタンだけに留まらない。現在、国連やNATOやEUがアフガニスタンで努力しており、その中でもNATOが治安の面で最大の支援を行っている。NATOの努力が失敗してしまうと、アフガニスタンの事態はより深刻なものとなる。アフガニスタンの平和と安定は、全ての人々に関わる問題である。アフガニスタンが新しい平和な国家として育つには長い時間がかかる。
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