5月に行われたTICADIV(第4回アフリカ開発会議)の際に、日本に対して食糧危機などのアフリカが抱える問題の代弁者になって欲しいとお願いをしたが、現在行われているG8サミットで日本がまさにその役割を担ってくれていることを感謝している。アフリカ大陸は、数年前までは一部で「呪われた大陸」と呼ばれていたように、紛争や貧困問題、経済成長率において消極的な記録を繰り返していた。アフリカは今日、そこから立ち上がり、競争力も増している。
従来のアフリカのパートナーだったヨーロッパがアフリカへの支援から背を向けていた1990年代初頭に手を差し伸べてくれたのが日本だった。日本が1993年に第1回TICADを開催したことを契機に、中国や韓国、インドなどアジア諸国との関係が拡大した。今年にはトルコともパートナーシップを結び、イランからもパートナーシップ締結の希望が出されている。アフリカは現在「チャンスの国」と見られているのである。
アフリカはインド、ヨーロッパの各々10倍、アメリカの4倍、中国の3倍の面積を有する。2020年には14億の人口になると予測されており、大きな消費が見込まれている。天然資源も豊富で、プラチナ、コバルトは世界の埋蔵量の90%、リンは76%、ダイヤモンドは73%、金は40%、鉄は15%を有している。電力についてもコンゴ川にあるダムだけでアフリカ全体の需要をまかなっている。世界では景気後退が懸念されているが、アフリカの2007年の経済成長率は約5.7%であり、2008年にはさらに延びると予測されている。これは、アフリカには外部からのショックに耐えうる力があり、資源の相場がよく、かつアフリカのガバナンスが改善しているためである。
アフリカ経済の可能性を活かすために、日本からさらなる投資を呼び込みたい。アフリカでは人口の54.4%が15歳から64歳で占められており、今後も若年人口の増加によりコストの安い労働力を提供し続けることができるだろう。しかし十分な資本がなく、また豊富にある資源も十分に活用されているとはいえない。つい最近までアフリカ大陸全体に対する外国からの投資はシンガポールに対する外国からの投資と同程度であったが、近年、アフリカに対する外国からの直接投資は急激に増加している。アフリカは地中海やスエズ運河、インド洋、太平洋へのアクセスがよく、企業の立地にとっても有利だろう。農業分野でも開発の可能性が大きく残っている。一方で、経済成長を支えるインフラ整備、エネルギー、コミュニケーション分野には、まだまだ投資が必要だ。
アフリカは、ガバナンスや民主制を強化し、所有権を確立することで、投資に有利な環境を整えるべく努力をしてきた。最近のジンバブエの状況は、アフリカ53カ国の例外といえよう。ジンバブエの大統領決選投票は周知のように不適切な環境下で強行されたが、第1回選挙は民主的に行われた。つまり、ジンバブエでも、完成はしていないものの、民主化のプロセスは始まっているのである。アフリカ諸国は、20年前から良き統治に向けた努力を行ってきた。長年、紛争下にあったコンゴ民主共和国で独立以来初めて民主的な選挙が実施されたことは、いい例である。アフリカは、日本がかつてしたように、民主主義や人権、法治主義、個人主義、市場経済など西洋的な価値観を受け入れてAU憲章に明記し、発展に努めている。日本はアフリカにとって近代化のモデルである。
AUの柱の第一は平和である。ダルフールに真っ先に平和維持軍を派遣したように、平和・安全保障理事会を設けて紛争問題に積極的に取り組んでいる。もちろん課題もあり、AU平和維持軍は8000人規模の予定だが、現在は2600人規模に留まっている。第二は開発である。開発がなければ民主主義はなく、民主主義がなければ平和もない。AUは各国とパートナーシップを結んで、開発を推進している。
AUでは会議だけをやっていた時代は終わり、行動をとる段階となった。インフラ面では道路の整備が急務であり、特に大陸横断道路が必要だ。昨日のG8サミットでも申し上げたが、先進国も様々な約束を守ることが重要だ。我々は、ガバナンスを改善し民主主義を促進すれば、支援を与えられると言われてきた。ガバナンス、法治国家、人権の分野で、我々は約束を果たしたと考えているが、支援の約束は守られていない。
アフリカは53カ国、14億の人口を持つ大陸だ。しかし、バラバラでは諸外国にとって魅力的な市場とはいえず、アフリカは西アフリカ諸国経済共同体(Economic Community of West African States: ECOWAS)などの地域経済圏の構築にも力を入れている。3億人の市場であるECOWASを含め、アフリカには計8つの地域経済共同体があり、政治統合は視野には入れていないが、経済統合については前進している。日本の企業にとっても、魅力的な市場であると考えている。日本企業はアフリカに直接やってこないといわれる。アフリカの一部の国では日本車が70%を占めているが、これは日本企業がヨーロッパ企業との連携を通して販売しているためである。ぜひ、日本にも、世界銀行など多国間の枠組みを通した投資と併せて、直接アフリカと取り引きすることを検討していただきたい。
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