ポーランドは18世紀以降、周辺国からの圧力の下に絶えず置かれてきた歴史を持っている。我が国は、第二次世界大戦後の45年間共産主義国であったが、1989年に共産主義体制に終止符が打たれてからは、西側への仲間入りを外交政策の基本としてきた。
来年は、我が国にとってNATO加盟10周年であり、またEU加盟5周年である。ポーランドはNATO加盟国として重責を果たしてきたと自認している。例えば、我が国はイラクやアフガニスタンに派兵をしている。また、ポーランドは西側諸国の一員として、自由・民主主義という重要な価値観を有しており、ロシアを含む全ての隣国がこの価値観を共有することを望んでいる。EU内における協力体制もますます深化しており、ポーランドも様々な分野でEU加盟国および近隣諸国との協力強化に努めている。
かつて、ポーランドは東西ドイツが統一した際、NATO加盟国に隣接することとなった。我々はこれを西側諸国との関係強化の契機と考えた。ロシアもそのように考えるべきであろう。なぜならば、NATO主導の先制攻撃を想定するのは困難であり、一方ロシアも重要なパートナーとなりうるからである。実際に、ポーランドはロシアのOECD加盟交渉に努力を払うなど、ロシアとの良好な関係構築を目指している。
しかし、残念ながら、先般のロシア・グルジア間の紛争はロシアのイメージを悪化させることとなった。欧州には二つの世界大戦に対する負の記憶が根強い。このため、EUでは国境やマイノリティーの問題へ対処するために、国境線を変更するのではなく、国境線をなくすという手段でこれまで成功を収めてきた。実際に、ポーランドとドイツは国境管理をやめた結果、人の往来など各種交流が一層盛んとなっている。これに対して、ロシアはグルジア問題において昔ながらの方法で対処し、19世紀への逆行という印象を欧州諸国に与えてしまった。また、エネルギー分野においても、この度の侵攻は、中央アジア・コーカサスからのエネルギー輸送へのリスクを高める結果にもなった。
ウクライナに対するロシアの今後の対応にも注目が集まっている。ロシアはウクライナを人為的な国境に基づく国家と考えており、現在の国境が永続的に安定するとは見ていない。今回のグルジア進攻は、ロシアがロシア系住民保護のために武力行使を辞さないことを示した事例と世界は考えている。もし、グルジアで起きたことがウクライナでも起これば、それは欧州、さらにはユーラシア大陸を揺るがす深刻な危機となるであろう。私はこのような事態はロシア自身の利益にも反すると考えており、ロシアが同じ過ちを繰り返さないことを願っている。
先日、ポーランドは米国とミサイル防衛に関する署名をした。この合意は、決してロシアを対象としたものではない。合意の下で配備される迎撃ミサイルの射程は短く、またこの構想のプロセスはウェブサイト上で公表されており、我々は透明性を確保することに努めている。また、ロシアとの信頼醸成のための話し合いも提案している。このミサイル防衛網はあくまでも無法国家に対するものであり、ロシアに対するものでないことをロシアは理解するであろう。
最後に、次期米国大統領について若干言及したい。オバマ候補であろうと、マケイン候補であろうと、ポーランドはこれを歓迎する。我が国にとって、米国との良好な関係の継続・発展は重要となろう。このことは二国間関係だけではなく、アフガニスタンでの治安確保など国際社会においても重要な要素と考えられる。
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