ISTC(国際科学技術センター)は旧ソ連地域における大量破壊兵器の不拡散を目的に、ロシアと旧ソ連の6カ国で活動している。大量破壊兵器に関する科学技術は大いに発展を遂げており、関わる主体の数が増えている。こうした技術は誰の手に落ちるかわからないので、危険な主体の手にこうした技術が渡らないよう、十分な監視が必要である。
不拡散には、防止(prevent)、検知(spot)、対応(respond)の3つのアプローチが必要である。防止とは危険物質の輸出管理など、人や技術や危険物質などの危険な移動を防ぐことであり、検知とは人や危険物質や資金の流れを探知することであり、対応とは拡散した場合に備えての防護策である。事前の防止が事後的な対応よりもコストパフォーマンスが安くつくことは言うまでもない。その中でISTCは、ニッチ・プレイヤーとして役割を果たしている。
ISTCは、核エネルギー技術や核燃料サイクルの技術発展、対テロリズムへの支援のための科学技術振興などの分野で事業を行っている。核や生物・化学に関する技術を軍事的な方面ではなく平和的な民生部門に用いるように仕向け、それがビジネスとして成り立つように支援するのがISTCの主な事業であり、資金面での支援だけでなく、研究のプロモーションや仲介の役割など、様々な活動をISTCは行っており、ISTCは、ちょうど不拡散とビジネスの十字路の交わるところにあると言える。現在ロシアでは、原油価格の高騰から原子力エネルギーの見直しが行われており、このことも核エネルギー技術の民生部門への転換への追い風となっている。
こうした事業を行ううえで特に重要なのは、人間という要素である。科学者が技術を間違った方向に使わないために、こうした技術が使い方を誤れば非常に危険なセンシティブなものであるということを科学者や技術者によく分かってもらうことが重要であり、科学者が技術を間違った方向に使わないように意識を高めてもらうことが慣用である。そして科学者や技術者の間に「責任の文化(culture of responsibility)」を醸成することが大切である。
拠出国のひとつとして、日本がISTCに果たしている役割は大きい。ISTCは不拡散の分野で15年間実績を挙げてきた。ISTCの培ってきたノウハウを世界の他の地域の不拡散にも役立てたい。
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