ハンガリーの外交政策の優先課題は、当初は以下の3つであった。NATOへの加盟、EUへの加盟、近隣諸国との関係の3つである。その後ハンガリーはNATOへの加盟を果たし、EUの加盟も果たし、隣国もほぼEUに入った。これまでハンガリーはこれらの優先課題で精一杯であり、グローバルな問題にはあまり目を向けてこなかった。しかし我々には世界のどこにいようと共通して取り組むべきグローバルな課題がある。当初の優先課題をほぼ果たしたハンガリーにとって、今日3つの重要な政策目標がある。ひとつは、統合された欧州における競争力のあるハンガリーである。第2に地域において協力を進めるハンガリーである。第3は、世界における責任あるハンガリーである。
統合された欧州における競争力のハンガリーについて、EUはハンガリーにとって主要な柱である。ハンガリーは体制変革後の近代化をEUの枠組みの中で進めるのが最善と考えてきた。そしてEU加盟を果たしたハンガリーは、EUのさらなる統合に向けて努力したいと考えている。EUの単一市場を世界の中でより競争力のあるものにすることが重要である。また、EUの拡大はEUがこれまで以上に国際社会におけるグローバルなアクターになったことを示している。その点ではEUの安全保障政策も持つ意味はこれまで以上に重要になっている。その点で現在最も重要な課題はリスボン条約である。リスボン条約はEUが外交面での統合へと進む第一歩となる。ハンガリーはそれを正しい方向と考えており、リスボン条約の批准発効を望んでいる。
地域において協力を進めるハンガリーについては、ハンガリーは近隣諸国の安定化・民主化に貢献したいと考えている。ハンガリーはEUの欧州近隣政策(ENP)の枠組みなどを通じて近隣諸国への支援を行ってきているが、それだけでなくEUの拡大プロセスのさらなる進展を図るとともに、NATOの拡大についても条件が整えば支持して行きたい。またこうした近隣諸国へのコミットメントは、ハンガリー国外に居住する300万人のハンガリー系住民にも関わることであり、ハンガリーは欧州におけるマイノリティ政策に関心を持っている。
世界における責任あるハンガリーについて、ハンガリーは一国で行動するというよりは効果的な多国間主義というアプローチを重視したい。そしてグローバルな課題に対して責任ある役割を果たしたい。主としてEUという枠組みを通じて行動することになるが、金融危機についても適切な規制の強化などに向けて国際的な協調を図るほか、気候変動問題についてもエネルギーの効率化などを通じて積極的に取り組むとともに、またエネルギー安全保障についても、供給源や輸送ルートの多角化や貯蔵能力の拡充などを通じて積極的に役割を果たしたい。
最後に、ハンガリーはこれらの努力を主としてEUの枠組みで行っているが、欧州とアジアの協力もこれまで以上に進めて行きたい。両者の経済協力だけでなく、グローバルな課題にも欧州とアジアは今度さらに協力していけるであろう。また、米国の新政権の誕生を通じて、米欧関係の発展にも期待したい。
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