JIIAフォーラム講演要旨

2010年2月1日
於:霞が関ビル35階、東海大学校友会館

ウォレス・グレッグソン

米国国防総省次官補(東アジア・太平洋担当)

「日米同盟について」

由緒ある日本国際問題研究所はこれまでも日米関係の変化の場に立ち会い、両国の関係の発展を目撃してきた。また、同研究所はその業務を通じて日米両国の関係発展に貢献してきた。この研究所ほど日米同盟の歴史と未来について語るに相応しい場はない。

最近では日米両国の相違点や意見の不一致ばかりが注目されがちであるが、そのような面にばかり目を向けていては日米同盟の全体的・永続的な側面に目がいかず、日米両国がさらなる協力関係を拡大していける多くの領域があることにも気がつかない。50年の長きにわたって日米の関係がどこまで発展してきたか、日米同盟がどのようにして期待以上の成果を上げてきたのか、日米同盟の今後の50年を我々が楽観と自信を持って見通せるのはなぜかということを看過してはいけない。

本日は第一に日米同盟を下から支える戦略目標について、第二にそれらの目標を達成するために米軍と日本がどのようなオペレーションを行っているか、そして第三に日米両国の人々を一つにつなぐ同盟の価値について述べる。

いまや日米両国はお互いをライバルではなく永続的な同盟関係にある民主主義国家として見ている。両国の関係はオバマ大統領が述べたように「対等な国家によるパートナーシップ」なのである。日米同盟の目的は日本の防衛とアジア太平洋地域における潜在的侵略行為の防止にあり、日米両国がそれぞれ責任を分有し、冷戦期も冷戦後も一貫して地域における平和と繁栄の維持に貢献してきた。長期的に見てアジア太平洋地域にはいまだ数多くの脅威が存在しており、安定が保証されているとは言い難い状況である。これら危機に対処し、日米同盟がアジアにおける安定と安全、そして繁栄をもたらすための土台として21世紀においても重要であり続けるために必要なプレゼンスと形勢、そして能力を米軍再編に関する日米間の合意がもたらしてくれるものと信じる。

以上の日米同盟を下から支える戦略目標を達成するために米軍と日本がどのようなオペレーションを行っているかについてであるが、すでに述べたように米軍は潜在的侵略行為の防止のために日本とアジアに駐留し、地域に平和と繁栄をもたらしてきた。しかし米軍の果たすべき役割はそのような狭義の軍事的役割にとどまらず、津波や台風などの災害からの復興支援、インフラの構築や医療の供給、技術的プロジェクト支援、孤児救済などより広範で深いものである。このような広義の役割を果たすことで米軍は地域における安全環境の形成に必要なより広範で活動的なプレゼンスを提供し、米国の外交的・経済的努力を倍率化させる役割を果たしているのである。また米軍は日本など各国の軍隊に共同訓練を促進する手助けとなっている。

日米両国の人々を一つにつなぐ同盟の価値について述べる。在日米軍は日本の地域住民に影響を与えている。日米両国政府は日本の地域住民に米軍の駐留が与える影響を同盟の持つ能力と抑止力を損なわない形で軽減する努力を続けている。日米同盟の価値を考えるにあたって最も重要なことは在日米軍が日本の地域住民との相互交流の機会を通じてよい関係を構築していることではないか。日米同盟は両国間に緊張をもたらすようなものではない。日米両国民の大半は日米同盟を強く支持している。この根底にあるのは米軍の軍人・軍属と日本の地域住民とが日々の相互交流の機会を通じて友情を育み信頼を高めあっていることである。在日米軍は両国の架橋となり、両国民を結びつける役割を果している。このような日常的に育まれる関係が根底にあってこそ、日米両国間の戦略的合意やオペレーショナル・プランが初めて活きてくるのである。教育、経済、医療などの例をみてもわかるように、在日米軍と日本の地域住民はどちらかが一方的に何かを学び取ったり、恩恵を享受したりするものではない――それは双方向のものなのである。

二つの民主主義国家間の関係はまさに親友同士の関係のようなものである。ときにはお互いに納得がいかないこともあろうし、ときには口論するようなこともあるかもしれない。しかし、お互いに協議を重ね、お互いの言い分に耳を傾けることで必ず解決方法は見つけられる。

以 上