JIIAフォーラム講演要旨

          JIIA−UNU-IAS共催

2010年6月28日
於:国連大学所

サリーム・H・アリ

ヴァーモント大学ルーベンシュタイン環境・天然資源学部准教授

「環境保護外交 ―                                        
        環境保護を平和構築の梃子にすることは可能か?」


環境保護を基に、平和を構築することは可能か。これは、国際関係学の分野においては、懐疑的な見解が多い問いである。例えば、2004年にケニア出身の環境保護活動家がノーベル平和賞を受賞した際、環境保護と平和の関連について多くの有識者から疑問が呈された。天然資源をめぐる国際関係について、主に4つの見解がある。第一は、資源の枯渇は紛争を導くという見方である。これは、国際関係学の最もスタンダードな見解である。第二は、豊富な資源は紛争を導くというものである。これは、ある資源のレジームガバナンスが崩壊し、管理・規制がない場合に起こる。第三は、豊富な資源は協力を導くというものであり、第四の見解は、資源の枯渇は協力を導くというものである。私は第四の見方を提示する。つまり、国家による環境保護地域の共同管理は、領土紛争解決を促進すると論じる。

平和創造や当事者間の友好関係維持に有益な役割を果たす環境保護地域を「平和公園」と呼ぶ。平和公園を領土紛争当事者間で共同管理することが、両者の協力を促進するのである。たとえ、環境問題が紛争に関連していない場合であっても、平和公園を意図的に作ることによって、国家間協力を促すことができる。平和公園の一例として、エクアドルとペルーによるコンドル山脈地域が挙げられる。両国による国境紛争は数十年前に遡るが、1995年2月に平和条約を締結した。しかし、両国は境界線画定には合意できなかった。代替案として、両国は当該地域を自然保護地域に指定した。国内自然保護団体はコンサベーション・インターナショナルや国際熱帯木材機関(ITTO)と協力し、2000年に生態管理レジームを形成した。こうした協力が2004年のコンドル−クチュク保護回廊の設置へと導いたのである。これは、環境保護団体が国際紛争解決に活発的に関与した初めての事例である。

東アジアにおいて、平和公園を通じて紛争解決が助長されるべきは朝鮮半島である。特に、非武装地帯は豊かな生態系が残る地域であり、平和公園を通じて韓国と北朝鮮が共同で環境保護を行えば、紛争解決に寄与すると考えられる。朝鮮半島では、韓国と北朝鮮が金剛山や開城工業地域において、環境保護に関する協力を既に行っている。これらのプロジェクトから言えることは、経済的側面を取り入れる必要があることである。非武装地帯における平和公園を有意義なものとするためには、経済的側面を取り入れることが肝要である。

以 上