JIIAフォーラム講演要旨

2010年9月9日
於:日本国際問題研究所

ジュリア・ニシュワット

米国国務省経済局上級顧問

「日米エネルギー問題について」


はじめに:日本の碁というゲームをみていて思うことは、「責める事と守る事は一体である」ということである。すなわちリスクを取らずに利益を生み出すことはできない。外国の石油依存を減らす、二酸化炭素の排出量を抑えるといったエネルギー領域
における課題への先進国のここ数十年にわたる取り組みはあたかも碁を見るようだ。今日は気候変動とエネルギー安全保障、中国との関係、そして現在における日米エネルギー協力の状況について語り、日米エネルギー問題を考える上での手かがりを模索したい。

気候変動とエネルギー安全保障:気候変動とエネルギー安全保障は密接な関連を有する。我々がグリーン技術抜きにエネルギー安全保障を追求しても、あるいはエネルギー安全保障を考えることなくグリーン技術開発を進めても、両者のバランスを図らなければ失敗に終わることになる。例をあげると、代替的なエネルギーの技術開発抜きで外国からの石油依存を脱却することは結果的に不可能である。また、エネルギー消費を減らすこと、すなわちエネルギー効率性を全く考えることなく代替エネルギーの開発を進めても、そのようなグリーン技術は経済的なインパクトを持たず、市場的価値を有することもできないであろう。

中国について:エネルギー・フリーダムを確実なものとするためには多国間協調が必須である。2010年度以降、中国は世界で最大のエネルギー消費国となり、中国が地球環境に与える影響は非常に大きなものとなっている。日米はエネルギー・フリーダムを確実なものとするためにも、中国をこの分野における多国間交渉のなかに取り込んでいかねばならない。また中国にも日米の有する優れたリサーチ能力の共有や石油消費部門での協力など、日米と同調することにメリットがある。

日米エネルギー協力について:現在のエネルギー分野おける日米協力には、日本の経済産業省と米国のエネルギー省間で行われている「クリーンエネルギー技術行動プラン」、ハワイと沖縄が代替エネルギーに関する経験と知識をシェアしあう「ハワイ沖縄クリーンアイランド・パートナーシップ」、そして23カ国の政府高官と企業の代表と環境問題専門家がエネルギーや環境に関する行動プランや他国間協力の可能性を模索する「環境と地球環境変動に関するメジャー経済フォーラム(MEF)」などが挙げられよう。これらのプログラムから得られる教訓は、ゼロから協力関係を作り上げることは多大な労力を伴うということ、参加者への適切なインセンティブの提供が成功を導く鍵であること、非政府主体にも門戸を積極的に開放すべきこと、そして継続的な対話を可能とするインフラストラクチャーを構築することである。日本は世界においてもエネルギー効率性や代替的再生可能エネルギー(太陽光、核、スマートグリッドなど)、太陽光・蓄電ハイブリッドパワーコンディショナシステム開発、大幅な二酸化炭素削減を可能にする産業技術能力、の部門で極めて先進的であり、世界の注目を集めている。このような技術的先進性ゆえに米国は日本をエネルギー政策における重要なパートナーとして必要とするのである。

以 上